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【明石商業】卒業後も選手たちが伸びる理由

2019.12.16


これまで狭間監督は、基本的に“ドラフト候補”と囁かれている選手でも進学を勧めることが多かった。来年のドラフト上位候補と囁かれている山崎伊織(東海大)は、同学年でエースだった吉高壮がセンバツ8強進出後にマウンドに立たなかった春の県大会でエース級の活躍を見せ、優勝の立役者となった。夏の大会でも注目投手として名前が挙がり、プロ志望なのではと囁かれたが、進路は東海大だった。吉高が日体大に進むことが決まっており「吉高とは違う大学でプレーしたい」と敢えてライバル校へ。そして今はチームのみならず、リーグを代表する投手に成長した。

狭間監督は“高卒プロ”を敬遠している訳ではない。個々のフィジカル面などを考慮した上での結論だ。いくら結果が出ていても、ケガが多かったり体が弱かったりすれば、プロのレベルにどれだけついていけるのかが未知数だからだ。「プロの世界はそんな甘くはない。簡単に“行きたい”と言って行ける世界ではないです」と指揮官。だが、前述の松本の場合は故障をしたことがなく、体の柔らかさが特徴だった。「練習態度は真面目。何でも真剣になってコツコツ取り組むタイプ」と普段の姿勢も評価しており、敢えてもっと経験を積んでスケールアップした上でプロに行って欲しいという指揮官の願いもあったのだ。

“さらに上へ”という貪欲さが磨かれるのは普段の練習にもある。部員が100人を超える明石商は、とにかく競争が激しい。チームは大きく3班に分かれ、他の運動部も共用で練習しているグラウンドでは曜日によってできることは限られるが、練習メニューをうまく回しながら汗を流している。1班がノックを受ける時は2班が走塁練習のためにランナーとなる。そして3班はトレーニング…という具合だ。1班(いわゆるAチーム)のレギュラーとして定位置を獲得していても、ライバルが頭角を現し、ポジション争いから後退すると、早々に2班(Bチーム)に“降格”することも。「1班にいたのに翌日に3班になることもありますよ。レベルだけでなく、取り組む姿勢とか練習態度も判断の上なので、生徒らからしたら毎日気が抜けないでしょうね」と狭間監督。サバイバルのような厳しい環境に身を置くことで、向上心をかき立て、次のステージで戦う上での大きな糧にもなっている。

今年は初めて明石商から直接、プロの世界に水上桂が飛び込む(楽天7位指名)。さらに来年はエースの中森俊介、1番打者の来田涼斗とドラフト候補選手が目白押しだ。注目度がさらに高まる明石商は、ここまで3季連続甲子園出場中。その先輩たちの背中を見つめる現役の“明商球児”は、「次は自分が」と今日も懸命に白球を追いかけている。(取材・写真:沢井史)

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