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【明石商業】狭間監督が惜しまない「勝つ確率を1%上げるための労力」(前篇)

2017.6.27
ウエイトトレーニングに取り組む選手たち
週3回取り組んでいるウエイトトレーニング

昨年の選抜、春夏通じて初の甲子園出場を果たした明石商業。バッテリーを中心とした鉄壁の守備力で失点を防ぎ、バントを多用する堅実な攻めを得意とする。選抜初戦では同点の9回裏、1死満塁からのサヨナラスクイズで甲子園初勝利を挙げると、そのまま勝ち進みベスト4に進出するなど、一躍全国クラスの強豪に躍り出た。
そんな明石商業野球部を率いる狭間善徳監督に、夏に向けての取り組みや練習に対する考えなどを伺った。


驚異的な安定感、恒例の追い込み練習

野球は確率のスポーツ」と話す狭間善徳監督は明徳義塾中学校の監督時代に4度の日本一に輝いた名将。2007年から指揮を執る明石商業でも最も計算の立つチームを作り上げ、2010年から続く夏の兵庫県大会7年連続ベスト8以上は史上最長。3年周期で全選手が入れ替わる高校野球において、これだけ安定した成績が残せるのは驚異的だ。「今年はそんな強ないで〜」と言いながらも3月11日、大阪桐蔭と行った今年最初の練習試合は3-0で勝利。20日後に日本の頂点に立つチームを6安打完封している。

現在の部員数は3年32人、2年47人、1年41人の計120人。効率化を図るため5班に分けて複数の練習を同時に行う。シーズンを通して取り組んでいるのが体作りだ。授業を終えた選手達がグラウンドに姿を現わすと、まず手に取るのはグローブでもバットでもボールでもなく、大きな弁当箱。明石商業の練習は毎日、2合飯を平らげるところから始まる。

ウエイトトレーニングは月・水・金曜日の週3回。5日毎に体重を測り、設定値に届いていないと階段走のペナルティーが課される。これにより入学時から10kg増量は当たり前。上級生か下級生かは太ももを見れば一目でわかる。それだけ食事もランニングも量をこなしている。

階段の駆け上がりを行う選手たち
追い込み期間中のメニュー「階段の駆け上がり」を行う選手たち

夏の大会を目前に控えた6月は練習の強度を上げ、一旦状態を落としてそこからベストコンディションに向けて右肩上がりとなるよう調整するのが一般的。

明石商業もこの方法を採っている。年によって多少の前後はあるが、今年の追い込み期間は中間テストが終わった5月23日から6月22日までの丸1ヶ月。メニューは、設定タイム付きの100m弱の短距離走や階段の駆け上がり(20段の階段10周を1セットとして1分20秒以内、それを10セット)をすることが多かった。

キャプテンの倉見育瑠は「最初の1週間は普通に行けると思ったんですけど、3年目で慣れたんかなぁと思ったんですけど、追い込み練習の後半になると朝起きるのがしんどくて学校の階段もきつかったです」と話す。


今年に関してはランニング量自体は例年よりも減らし、走者を背負った場面での複雑なプレーなど実戦練習に時間を割いた。現チームはスタメン9人の内、6人が下級生。クリーンアップの一角を1年生が務め、3年生はショート、セカンド、センターの3人だけという若いチーム。チーム状況に合わせてメニューを組んだ。挟殺プレーの練習では、野手から野手へボールを渡す回数や走者の位置によって目の前のワンアウトで良しとするのか、併殺を狙うのか拡声器を手にした狭間監督の声が響いていた。

やろうとしている野球のレベルは高いが、プレーには必ず根拠、基準がある
バントが多い攻撃面でもその選択には根拠がある。選抜出場時、前年秋の1試合平均犠打数4.75は出場校中最多。加えて甲子園での戦いぶりから明石商業=バントのイメージが定着したが、練習で特別バントに力を入れているわけではない。フリーバッティングで最後の数球は必ずバントの他にもバスター、エンドランを取り入れ、冬場のケース打撃ではむしろ、相手のバントシフトの裏をかく攻め方を繰り返し練習していた。

明石商業を野球部を率いる狭間善徳監督
明石商業を野球部を率いる狭間善徳監督

「バントやと思ってるところをバントじゃなかったらビッグイニングに出来るかもしれんし。毎年、状況に応じて対応出来るだけの練習はしてるけどね。バントやスクイズや言われるけど、あの状況の中で、あのバッターで次のバッターと何回、何点差って考えた時にどれが一番勝つ確率が高いのかって選択した結果、たまたまそうなっているだけで、それだけじゃないんやけどな。最低ランナーを送れてあわよくば1、3塁が狙えるバッターであれば、そっちの方が確率が高いやろからそっちを使うやろし」走者が出れば判で押したように送るのと、様々な選択肢がある中で送るのとでは、意味合いが全く違う。(取材・撮影:小中翔太)

後篇へ続く

監督プロフィール

狭間善徳(はざまよしのり)
1964年5月12日生まれ。明石南高校から日本体育大学。明徳義塾中学軟式野球部の監督として4度の日本一に輝く。2006年に明石商業のコーチとなり2007年から監督。昨年の選抜では甲子園初出場でベスト4入りを果たした。

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