学校・チーム

【京都成章】私生活をちゃんとすることで野球の技術が上がる

2018.5.15


書く文字は何にしようか。8年前の秋のテーマが「心で勝て」なら昨夏のテーマは「最強の挑戦者」さらに「笑顔」の二文字も書き加えた。ベンチ入りメンバー20人とマネージャーにも一言ずつナンバーワン宣言を書き込んでもらった。選手がこのメガホンの意味を知ったのは試合直前のミーティングの時。
「今日、わしがお前らのナンバーワン宣言を書いたこのメガホンを振ったらフルスイング、クソボールでも振れ」
その時は笑っていた選手たちだが、それからまもなく幸運のメガホンはビッグイニングと19年ぶりの甲子園を呼び込むことになる。

京都成章は1点を先制された2回、無死1塁から送りバントを試みるが2球続けてファールにしてしまう。バント継続かヒッティングか、その時松井監督の脳裏に浮かんだのは「3回までノーサインでいきましょうよ」という大嶋氏の言葉。思い切ってノーサインに切り替えると安打が飛び出し無死1、2塁とチャンスを拡大する。さらにバントがセオリーのこの場面でも松井監督はノーサイン。龍谷大平安守備陣はファースト、サードがチャージするがボールが先行し結局、四球。全ての塁が埋まった。無死満塁から2点適時打で逆転に成功すると、打線の勢いは止まらずこの回一挙9得点。試合の大勢は序盤で決し19年ぶりに夏の京都の頂点に立った。



諦めずにいろんなことに取り組んでた成果が集約して夏に出る、松井監督は旧チームにそう教えてもらったと話す。
「去年のチームもよっしゃこれで行けるぞという手応えは全くなかったですね。あれよ、あれよという間に。でも取り組んできたことを大事にやってましたよね。今年もそういうチームにしたいな」

今年は例年と比べて野球以外の部分で注意することが多いという。
「自分の野球の基本は桃山高校の盛山監督。野球部以外の部分をちゃんとしなさいと、それしか言われてなかったので。目指すのは甲子園やけど人間的な成長がないとあかん」

ミーティングでは「私生活をちゃんとすることで野球の技術が上がる」ということを何度も話し、授業中に寝てしまうなどルールが守れなかった選手は練習参加を認めない方針を固めた。今年の春合宿で「人間的に頑張れるやつじゃなかったら野球の試合では使わへん」と断言した。その後には「そのかわり、お前らがほんまに頑張ったら甲子園行ける」と続けた。去年のチームを間近で見てきた選手たちならその意味が分かるはずだ。

1月4日、年明けの始動日には決まって書き初めを行う。そこで松井監督が記した文字は「連覇」の二文字。春季大会は1次戦で敗れ夏はノーシードとなったが2年連続の甲子園出場を目指す。


松井常夫監督
1964年5月29日生まれ。京都市出身。桃山高校から京都教育大学。卒業後、京都成章高校のコーチを務め、翌年から部長。2005年より監督となり現在に至る。赴任当初はナイター設備がなくボールに石灰をまぶしてノックしていたことも。創部3年目からチームに関わっているため歴代の選手全員を指導しており、監督としては春夏1度ずつの甲子園出場経験がある。今夏は京都大会連覇と甲子園での監督初勝利を目指す。(取材・写真:小中翔太)

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