なぜ広陵OBは伸びるのか
中井監督は日頃から選手に口酸っぱく言っていることがあるという。
「考えんとうまくならんだろうが」
指導者に言われたことだけをこなすのではなく、選手が自分で考え、自発的に取り組むよう促している。平日の全体練習は18時ほどで切り上げ、あとは22時半の寮の就寝までの時間の使い方は選手に委ねられている。中井監督はコーチ陣に対しては「教えすぎると伸びんぞ」と伝えているという。
「指導者ってのは教えたがるから、選手を見ない怖さはありますよ。でも、空いた時間で選手が自分で考えて、どれだけ練習するか。それで選手は伸びてくるし、球運もついてくるんです」
中井監督には印象的なシーンがある。前出の石原が母校の練習に顔を出した際、後輩の投球練習を見て「どうやって投げてるの?」と興味津々な様子で尋ねたのだ。
「後輩から教えてもらおうとする素直さですよね。こういう姿勢を先輩から学んでいるのだと思います」
チーム運営に関しても、中井監督は「答えは言わない」と徹底している。何か問題が起これば「選手たちでミーティングして、答えを持ってこい」と伝える。選手間でいい話し合いができたと思えば、「それをできるようにせえ」と発破をかける。物足りないと感じた場合は「それでええん? 控えの選手は何も言わんの?」などと再考を促す。
このあたりの手綱さばきはさすがベテランといったところだが、中井監督は「選手に絶対にウソはつかない」と覚悟を決めて接している。
「打算なんか絶対にしたくないし、自分が間違っていれば『ごめん』と言いますよ」
こうした姿勢が伝わるからこそ、広陵の選手たちの口から「中井先生のためにも勝ちたい」という言葉が出てくるのだろう。
広陵の練習には悲壮感がない。優れた才能を持った選手たちが、自分のやるべきことを考え、希望を持って前向きに取り組んでいる。そんな先輩の姿を見て、後輩も広陵イズムを受け継いでいく。
広陵の黄金時代はまだまだ続きそうだ。(取材・文:菊地高弘/写真:編集部)
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