学校・チーム

【広陵】基礎を徹底させてチームの総合力を上げる、伝統の守備練習

2016.11.15

広陵高校の野球部員

これからオフシーズンに突入する高校野球。一冬を超える間に身につけたいのが基礎守備力だ。
選抜優勝3回を記録する全国屈指の伝統校“広陵高校”が受け継ぐ、守備の基礎練習から多くのことを学ぼう。


総合力を高め、野球を知る 次のステージで輝くための指導法

中井哲之監督
中井哲之監督
1962年7月6日生まれ。広島県廿日市市出身。広陵高校で遊撃手として80年の春・夏と甲子園出場。大商大を卒業後、広陵高校野球部コーチを4年経て、90年に監督就任。

 新チームが発足し2ヵ月も経たない9月中旬。丘の上のグラウンドは100名を超える選手たちで埋め尽くされていた。全国屈指の部員数を誇る野球部を指揮する中井監督は“選手たちの未来”を見据えた指導を心がける。
「私は常に総合力が高くバランスの良いチームというものを目指しています。教え子たちには走、攻、守、全て揃った上で次のステージに上がって欲しいので、ただ勝てばいいとは思っていません。レギュラー、控え、関係なくみんなが基本を知っておくことが今後の野球人生において大切なことだと思います。私たちが野球の基本中の基本を教えることによって、彼らがいずれ親になり、指導者になったとき、しっかりとした野球を他人に伝えられるようにしてあげたいんです」。

シンプルな練習でミス軽減短時間かつ全力でやること

総合力の高い野球を目指す。その中で、守備について中井監督はこう話す。
「守備についてはいたってシンプルな考えです。野手はアウトにできるボールを確実にアウトにしてほしい、ただそれだけです。ファインプレーは求めません」。
 派手なプレーや、ギリギリのプレーでアウトをもぎ取ることよりも、凡事徹底を重視している。
「高校野球の守備において、一番多いミスは送球に関するミスです。この送球ミスをなくすため行っている練習もシンプル。それは動きのあるキャッチボールを毎日やる。試合中、キャッチボールのように足を止めながら投げるケースなんて投手以外にありえません。野球は常に動きながらのプレーが求められます。練習のうちから後ろに投げたり、走りながら投げるなど、短時間で集中し全力でやることで送球ミスを減らすことができます」。
 さらに、送球の他にも守備力向上に欠かせないことがある。
「それは身体の柔軟性。特に二遊間の選手は、ダブルプレーなど細かい動きの中でボールを扱うので、股関節や関節周りの柔らかさが必要とされます。柔軟体操はグラウンドでなくてもできる。やる子とやらない子では違いがハッキリでますので、こういったところにまで目を向けられる子がやはり伸びますね」。

取材当日は秋季大会前ともあり、ランナーを付けた実践的な守備練習を行っていた。

キャッチボールでは大きな声が飛び交う。

オフに徹底して鍛える 捕って、投げる一連の基本動作

 冬を迎え、アウトオブシーズンに突入すると、広陵高校は伝統的に基本練習を徹底して行い、守備力に磨きをかけるという。
「手で転がしたボールを捕り、丁寧に投げる。この一連の動きが基本練習です。簡単そうですが、肉体的にかなり辛いですよ」。
 基本練習はポジション関係なく一班5、6人に分け、1〜2時間かけて全員で行う。
「動作の中に足を開いたり、ジャンプしたり、選手が飽きずに練習できるようにと何十種類。この基本練習をやれば、自然とグラブが下から出て、足を動かせるようになります」。
 また、型にはめず、個人に合わせた指導をするのも中井流だ。
「選手一人ひとりやりやすい形があり、色んな捕り方、投げ方があって良いと思います。ただ、ケガをする恐れがあったり、あまりにも間違っていたら指導します。でも100%言わずヒントを与えるだけ。そうすることにより選手は自分で考える力を培える。どうしたらいいのかと考え、変えていくことが上達するために大切なことだと思います」。 
 オフだからこそ鍛えられるものがある。冬を越え、春に花咲く広陵ナインに注目したい。

グラウンド外ではウエイトトレーニングに汗を流す姿も。ボールに触れない時間もしっかりと有効活用。

(左)ピッチャー陣は投げることだけではなく、ピッチャーノックも毎日行っている。
(右)捕るだけではなく、送球までが守備の一連の動作。選手それぞれ課題をもって練習に取り組んでいる。

数字が意味するものは「甲子園・選抜・日本一」下の4という数字は、あと4日で秋季大会が始まるという意味。

ノッカーを務める東コーチのこだわり

広陵高校の守備を支える東寿吉コーチ
東寿吉コーチはノックを打つ際、一工夫を加えることで選手の守備力向上を目指している。
「一歩目の出足を意識させたいので『打点』を変えて高目の打球、低目の打球と打ち分けています。そうすることにより、バウンドの跳ね方も変わってくるので、選手たちは一瞬の判断力を鍛えることができます」。
ノックも基本練習の一環というのが広陵高校の伝統でもある。 「打球処理の難しいボールは打ちません。あくまで選手が捕りやすいボール。その中で判 断力や、足の動かし方を教えています」。

(取材・文=児島由亮 写真=武山智史)


広陵高校(こうりょうこうこう・広島県)

●監督/中井哲之
●部長/市場直樹
●部員数/2年生58名、1年生42名、マネージャー2名
1911年創部。選抜23回、選手権21回出場。選抜は26年、91年、2003年と計3回優勝。OBには金本知憲(阪神)、野村祐輔(広島)など数多くのプロ野球選手を輩出。