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【専大松戸】名伯楽・持丸監督に訊く「投手育成論」(前編)

2022.4.8

真っすぐ伸びるシュート回転




「育て方なんてないですよ」と謙遜する持丸監督だが、どういうピッチャーが上の世界で活躍できるかは、何となく見えているという。
「肩回りが柔らかくて、腕の振りの強さ以上に、吹き上がるストレートを投げられる子。一番思い浮かぶのが上沢で、入学時は120キロも出ていなかったけど、『プロに行ける素材』と確信したのを覚えています」

 取材当日、新1年生が練習に参加し、シートバッティングに登板した。右のオーバースローで、持丸監督が「この子、うまく育ったらプロに行ける素材だと思う」と評価するピッチャーがいた。ストレートはまだ130キロ前後だが、腕の振り以上に球の勢いがある。持丸監督は、「あの子はシュート回転しながらも、真っすぐいくのがいいよね」と呟いた。

 どんな意味か……?
「体の構造上、シュート回転するのが自然な投げ方です。問題は、そのシュート回転がどの距離で起きるのか。18.44メートルなら真っすぐいくピッチャーも、40メートル離れれば、シュート回転が大きくなり右方向(右投手)に曲がっていくのがわかる。これが、18.44メートルで大きく曲がるようでは、ピッチャーとしては厳しくなります」

 ピッチャーとして細心の注意が必要になるのが、対角線に投げるボールだ。右ピッチャーであれば、プレートの三塁側を踏んで、右バッターのアウトローを狙う。リリースだけで調整しようとして、手で引っかくような投げ方になりやすい。
「そんなときは、あえてインハイのボール球を投げ込む。インハイに投げれば、シュート回転で吹き上がるボールになりやすい。その体の使い方のまま、アウトローに投げられるようになればいいんですけどね。理想はシュート回転しながらも、右対右のアウトローにまっすぐ投げ込めることです」



 今風に表現すれば、「シュート成分が少ないピッチャー」と言える。
「ピッチャーはとにかくストレートです。たまに、『ストレートが動いて、クセ球で面白いですね』と言う人がいるけど、高校生のときは伸びるストレートを追い求めなければ、次のステージでは活躍できないと考えています」

 小さくまとめずに、土台となるストレートを伸ばしていく。投手指導の大基本は、ここにある。(取材・文:大利実 写真:編集部)

後編に続きます。

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