トレーニング

「普通の高校生が140km/hを投げるためのポイント」(後編)

2022.3.11

多くのプロ選手も自主トレに訪れる野球専門ジム「Mac's Trainer Room」(広島県東広島市)。代表を務める高島誠さんはプロだけでなく多くのアマチュアチームの指導も手掛けており、昨年8月には『革新的投球パフォーマンス:普通の高校生でも毎日50分の練習で140km/hを投げられる』(日本文芸社)を出版しています。前編では球速アップに必要な出力、柔軟性の重要性とチェックポイント、チェックする頻度などについて聞きましたが、後編では更に詳細なポイントについて野球ライター西尾さんが聞きました。


「体を大きくする」ために注意するべきこと

インタビュー前編はこちら >

——前編でお話を伺って小さいうちから柔軟性を高めておくことの重要性がよく分かりました。その他にジュニア世代からしっかり取り組むべきこととしてはどんなことがあるでしょうか?

しっかり栄養を摂って体を大きくするということですね。食事ではタンパク質をとる習慣はつける必要があります。あとは摂取エネルギーに対して消費エネルギーが上回ることが多いですから、そこは注意して欲しいですね。

——成長期に練習をしすぎると、本来体の発育に使うエネルギーを練習で使ってしまうということですね。

そうですね。中学までうちのジムに通っていたピッチャーの子がいたんですけど、高校からカナダに渡って、今はアメリカの大学で投げています。彼は骨格から日本人とは違う感じになっているんですが、それは成長期にしっかりと栄養を摂って適切にトレーニングをした結果なんです。逆に言えば、日本人でも同じようにすればアメリカ人選手のような大きな体になれるということなんです。

——日本だと高校野球を引退してから体が大きくなってパフォーマンスが上がる選手も多いですよね。

それだけ現役時代に栄養が足りていないということですよね。早朝練習をするために朝ごはんをしっかり食べられない、睡眠時間も短いというのは体の成長を考えると逆にマイナスが大きいと思います。高校生であれば、まだまだ身長が伸びる子も多いですからね。

全員同じメニューとトレーニングは×


——成長する時期は選手によって違いますが、トレーニングもそれによって当然変える必要はありそうですね。

(中学や高校、大学で)新入生が入ってきて、みんな同じメニューと同じ負荷でトレーニングするのはおかしいことですよね。選手それぞれ体の大きさも筋肉量も違うわけですから。早生まれでこれから骨がまだまだ伸びるような選手は気をつける必要がありますし、逆に体ができている子は同じ回数でも(トレーニング器具の重さを)重くするなど負荷を上げなければトレーニング効果は薄くなります。投げる球数の量も考え方は同じで、個人差があって当然だと思います。

——全員に同じようにトレーニングをすると怪我をする選手が出てきますよね。


そうですね。そういうことをやって怪我人が出るのは問題なんですけど、でも自分は軽傷であればある程度怪我人が出るのは悪くないことだと思います。

――それはなぜですか?

全然怪我人がいないと思っていたら、いきなり手術をしないといけないような怪我が発生することの方が最悪だと思うからです。痛いのに続けて我慢していたということですし、痛くても言えない雰囲気がチームや指導者にあるということでもあると思います。

——なるほど。それは確かにそうですね。

どこかを痛めたりすることで、上手く動けていないことに気がつくケースも多いんです。その怪我をきっかけになぜ痛めたのか考えるようにすることも大事だと思います。「柔軟性は足りている? ストレッチをサボっていない?」みたいな話にもなります。ですから私が指導している学校では一定数の軽傷の怪我は早い段階で出てくる方がいいですし、「何かおかしいと思ったら自分で判断せずにすぐに報告して」とは常々言っていますし、言いやすい関係性を意識しています。


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