トレーニング

普通の高校生が140km/hを投げるためのポイント!(前編)

2022.3.9

昨年大ブレイクした杉本裕太郎(オリックス)をはじめ、多くのプロ選手も自主トレに訪れる野球専門ジム「Mac's Trainer Room」(広島県東広島市)。代表を務める高島誠さんはプロだけでなく多くのアマチュア選手の指導も手掛けており、昨年8月には『革新的投球パフォーマンス:普通の高校生でも毎日50分の練習で140km/hを投げられる』(日本文芸社)も出版し、環境的に恵まれないチームや選手にも大きな反響を呼んでいます。そんな数多くの選手を指導してきた高島さんに高校生投手のスピードアップ、パフォーマンスアップのポイントを野球ライター西尾さんが聞きました。


まずは出力(筋出力)と柔軟性

インタビュー後編はこちら >

——高島さんの著書ではある程度野球をやってきた選手であれば「特別な才能がない普通の高校生でも140キロは目指せる」ということが書かれています。指導する時はどのあたりをチェックされるのでしょうか?
 
まずは出力(筋出力)と柔軟性です。出力はメディシンボール投げのスピード、普通のピッチングのスピード、プルダウンのスピードですね。特に大事なのはプルダウンです。「プルダウンでのスピードからマイナス10キロというのがマウンド上で投げられるスピード」というのが目安になります。
 
——「プルダウン」というのは助走をつけて全力で投げることですね。そこからマイナス10キロが目安なんですね。

そうですね。マウンドから140キロを投げるにはプルダウンでは150キロが必要になりますけど、それが足りなければ出力が不足しているということになります。よくフォームのことを気にする選手が多いですけど、プルダウンで130キロしか出ないのであればフォーム以前の問題ですよね。プルダウンで150キロ出るけどマウンドからは130キロしか出ない、というのであればメカニズムの問題になってきますが、出力自体が足りないのであればそれを上げる必要がある、ということですよね。出力のスポーツなのにフォームを気にしてそこをないがしろにしているケースが多いと思います。

——なるほど分かりやすいですね。柔軟性に関してはどのあたりが重要になるでしょうか?

出力を上げていくことにフォーカスしていくと、柔らかさがない怪我に繋がりやすくなります。具体的にチェックするのは股割り、ブリッジ、スクワット、股関節の外旋。部位では胸郭部分と股関節、その連動、あと足首ですね。
故障を防ぐという意味もありますし、ストライクゾーンに速いボールを投げるためにも柔軟性は必要になります。

——なるほど。

股関節から胸郭の柔らかさがないと前でリリースできないんです。以前、出力は高いけど柔軟性を高めるエクササイズをなかなかやらない選手がいて、(捕手が立って受ける)立ち投げだと144キロ出るのに、低く投げようとするとどんどん遅くなって、ストライクゾーンの低めだと132キロしか出なかったんです。フォームを改善するにもベースとなる動きをするための柔軟性が必要になります。

「大きな弓矢」も引けなければ意味がない 

——柔軟性のチェックではどこが引っかかる選手が多いですか?

まず股割りができない選手が多いです。股割りができないと並進運動ができません。あと胸郭が硬いということも多いです。そうなるとどうしても、腕だけで投げる「手投げ」になります。本でも弓矢に例えていますけど、筋肉量を増やすことは弓矢自体を大きくすること、柔軟性はその弦をどこまで引けるかというイメージです。

——弓矢の例えはとても分かりやすいですね。いくら大きい弓でも引けなければ意味がないですもんね

そうなんです。ポテンシャルは高いけどなかなか速いボールが投げられないという選手も多いと思いますが、大抵はそういうケースなんです。逆に例えば山岡(泰輔・オリックス)は身長は小さい(172cm)ですけど、めちゃくちゃよく引ける弓という感じですよね。昔から柔軟性はありました。でもそんな山岡のような選手でも、硬くならないようにするチェックは当然必要になります。

——柔軟性を高めるエクササイズは小学生など早い段階から取り組んでおいた方が良いものですか?

そうですね。柔軟性を高めるエクササイズを行うのは早い方がいいですね。子どもの頃から柔軟性の高い選手はナチュラルに動ける幅が広くなりますから、良い動きをするのにも無理がありません。逆に柔軟性の低い選手は硬い体にあった動きになってしまっていますから、それをリセットするのに時間がかかります。

——でも体が硬くても結果を残せてしまう子どももいますよね?

そうですね。そういう子は柔軟性の必要性を感じていないことが多いですね。中学生くらいまでは体の成長が早いことで他の選手より結果を出すことができてしまいますが、高校生になると柔軟性がないことで対応できないことも増えてきますし、怪我のリスクも高くなると思いますね


PICK UP!

新着情報