
3月に一斉休校となってから、選手たちは自主練習を余儀なくされた。下原は管理するだけでなく、それまで指導者だけが読んでいた野球ノートを、グループLINEを通じてチーム全員で共有することを決めた。
下原が意図を教えてくれた。
「生徒たちが個々で考えていることを偽りなく書いてほしかった。生徒たちの気持ちを切らせたくなかったこともありますが、一番はチームの繋がりを大切にしたかったんです」
5月に入ってからは、オンライン会議アプリ「Zoom」を活用し、本来ならば学校のホームルームが始まる8時30分からミーティングを行った。その後、午前中は勉強、午後からは練習と大まかな時間割を義務付けた。それも、野球部の繋がりを強くするためであり、何より選手たちの〝非日常〟を限りなく日常にさせる、下原の親心でもあった。
20日。夏の甲子園および都道府県大会の中止が発表され、全国の高校球児が涙に暮れるなか、仙台商も全員が涙した。
下原は選手たちに、こう諭した。
「野球に取り組む姿勢、チームの繋がりが『一番よかった』と、みなさんから言っていただけるような時間を過ごしていこう」
登校が再開した6月1日。仙台商は公式戦用のユニフォームで再スタートを切った。
チームカラーの赤がグラウンドで滾る。下を向く者などいない。野球ができる喜びを爆発させるように、白球を追った。
歩みが試される夏。「打倒私学」を果たし宮城の頂点に到達するまで、仙台商は心と体、そして、ユニフォームを燃やす。(取材・文・写真:田口元義)
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