昨年6月に発売されたこの本では、実際にあったプレーを挙げながら、考え方、守備位置、カバーリング、ルール等を初級、中級、上級に分けられた全120問を徹底解説しています。今回は上級編の中から、ランナーが一・二塁塁の場面での内野守備に関する出題です!
上級編|問題4
問題
無死一、二塁でショートの前にインフィールドフライにはならない程度の小フライが飛びました。普通に捕球できる打球ですが、それではアウトは一つしか取れません。
この打球でダブルプレーにするには、どうしたらよいでしょうか?
解答・解説
走者を走らせないために捕球するそぶりを見せながら、あえてワンバウンドで捕球します。一、二塁や満塁の場面は必ずしも打者走者アウトを狙う必要はありません。走者を釘付けにしていますので、三塁→二塁の順に転送してのダブルプレーも可能です。注意してもらいたいのは、打球に直接触らずにワンバウンドで捕球すること。グラブに当てて落球すると故意落球となり、ボールデッドになってしまいます。また、故意落球をした場合はアウトカウントが増えて、次の打者に回ります。
公認野球規則5.09(a)(12)にはこう書かれています。
『0アウトまたは1アウトで、走者一塁、一・二塁 、一・三塁のとき、内野手がフェアの飛球またはライナーを故意またはライナーを故意に落とした場合。ボールデッドとなって、走者の進塁は認められない。
【規則説明】内野手が打球に触れないでこれを地上に落としたときには、打者はアウトにならない。ただし、インフィールドフライの規則が適用された場合は、この限りではない』
小フライをあえて捕らずにダブルプレーを狙うケースは送りバントのときが多いですが、バントのフライでも故意落球は適用されます。フライを落とすときは、触らないで落とす。これを忘れないでください。
実際にあったプレー
2017年3月31日の巨人対中日戦。4回表無死一塁で中日のダヤン・ビシエドの打球はショートの頭上に高く上がりました。ショートの坂本勇人はビシエドが全力疾走していないのを確認し、あえてワンバウンドで捕球し二塁へトス。これを受けたセカンドの中井大介が一塁に転送してダブルプレーが完成しました。小フライではない打球でこのプレーを完成させるには、打者走者を見ることが絶対条件です。ビシエドの打球は滞空時間の長いフライでしたが、JK(準備と確認)ができていた坂本の見事なプレーでした。
『高校野球脳を鍛える 実戦プレー問題集』(田尻賢誉/竹書房)
昨年6月に発売されたこの本では、実際にあったプレーを挙げながら、考え方、守備位置、カバーリング、ルール等を初級、中級、上級に分けられた全120問を徹底解説しています。
著者
田尻賢誉(たじり・まさたか)1975年兵庫県生。学習院大学卒。ラジオ局勤務を経てスポーツジャーナリストに。高校野球をはじめ、徹底した野球の現場取材に定評があるほか、指導者、中高生、父兄への講演活動も行っている。『機動破壊』、『機動破壊の秘策』、『機動破壊の解析力』、『高校野球は親が9割』、『超強豪校』、『激戦区を勝ち抜く方法』(すべて小社)など著書多数。
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