トレーニング

「高校野球脳を鍛える 実戦プレー問題集」にチャレンジ!(上級編:問題2)

2020.6.23

昨年6月に発売されたこの本では、実際にあったプレーを挙げながら、考え方、守備位置、カバーリング、ルール等を初級、中級、上級に分けられた全120問を徹底解説しています。今回は上級編の中から、試合終盤に1点リードした場面での内野の守りに関する出題です!


上級編|問題2

問題

1対0とリードして迎えた7回裏の守り。
2死二、三塁のピンチを迎えました。
このとき内野手がJK(準備と確認)しておくべきATKは何でしょうか?

実際にあったプレー

2018年明治神宮大会決勝・星陵対札幌大谷戦。1対0とリードする星陵は7回裏に2死二、三塁のピンチを迎えました。ここで1番・北本壮一朗の打球は二遊間のゴロ。ショートの内山壮馬は打球に追いついていましたが、一瞬迷ったためにボールはグラブの下を抜け、打球はセンター前へ。二者が還り、札幌大谷が逆転に成功。そのまま逃げ切り、優勝を果たしました。

解答・解説

この場面でのA=最悪は「ゴロが抜けて二者が生還して逆転」、T=最低限は「ゴロの打球を止めて三塁走者は生還で同点。二塁走者は三塁ストップ」、K=最高は「ゴロをさばいて打者走者アウトで1点リードのまま」です。

例に挙げたプレーで、ショートの内山は打球に追いついており、捕球可能に見えました。それを、なぜスルーしてしまったのか。内山はこう言っていました。「前の試合で同じような打球が来て、捕ってから回転して投げてアウトにしたプレーがあったんです。今回もそうしようか迷いました」。いざ、打球が飛んできたときに、捕って回転して投げるかどうか迷っています。それが原因でした。

やるべきことは、ピッチャーが投げる前にATKを確認すること。優先順位は失点を防ぐことですから、「アウトにできなくても打球を外野に抜かせてはいけない。打球に触って止めればいい」という最低限のプレーがJK(準備と確認)できていれば、逆転は防げました。やはり、打球が来てからプレーの選択をするのは焦りもありますし、難しい。プレーの前に、ATKと優先順位を確認し、「二遊間や三遊間に打球が来た場合はどうするか」をイメージしておけば、打球が来てから迷うことはないでしょう。

ちなみに、この試合、星陵は最速150キロのエース・奥川恭伸が先発しておらず、リリーフで登板できる状況でした。最悪でも同点にとどめておけば、十分に勝機が見込めます。そこまで頭に入っていれば、「捕ってから回転して投げる」という勝負のプレーは選択肢から外せたはずでした。

とにかく、プレーが始まる前にATKを確認すること。大事な場面では、タイムを取ってでも忘れずにやるべき。選手間で声をかけ合い、誰が何をするべきか明確にしてからプレーに入る。これを習慣づけてほしいと思います。


『高校野球脳を鍛える 実戦プレー問題集』(田尻賢誉/竹書房)

昨年6月に発売されたこの本では、実際にあったプレーを挙げながら、考え方、守備位置、カバーリング、ルール等を初級、中級、上級に分けられた全120問を徹底解説しています。





著者

田尻賢誉(たじり・まさたか)
1975年兵庫県生。学習院大学卒。ラジオ局勤務を経てスポーツジャーナリストに。高校野球をはじめ、徹底した野球の現場取材に定評があるほか、指導者、中高生、父兄への講演活動も行っている。『機動破壊』、『機動破壊の秘策』、『機動破壊の解析力』、『高校野球は親が9割』、『超強豪校』、『激戦区を勝ち抜く方法』(すべて小社)など著書多数。

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