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【川和】東海大相模との激闘と「最後のミーティング」

2021.7.26

春のセンバツ大会優勝校にして神奈川県内公式戦43連勝中の王者・東海大相模。そんな王者に全国選手権神奈川大会4回戦で一歩も引かない大熱戦を演じた公立高校がある。県内屈指の進学校としても知られる川和高校だ。最終回に力尽きたが、打っては二桁安打、守っても8回終了まで1点に抑えるなど、「ひょっとしたら」の期待を全国の高校野球ファンに抱かせた。その戦いぶりは「これと決めて攻めてくるチームには強みがある。あれは勉強になった」と敵将・門馬敬治監督をもうならせた。そんな激闘から一夜明けた7月21日、同校グラウンドの片隅で「最後のミーティング」が行われた。


頂点を目指して本気で勝負したから、君たちは“good loser”になれるんだ

大熱戦を演じた前日と同じ青い空と入道雲。肌の焼ける音が聞こえてきそうな強烈な日差しと蝉の声。野球部の姿のないグラウンドでは陸上部員がトラックを駆け、ラグビー部員達がウォームアップで汗を流している。

そんな様子を横目にバックネット裏の木陰では、練習着の野球部員たちが椅子に腰掛けて伊豆原先生を見つめている。3年生はもう練習着を着ていない。

 

以下、「最後のミーティング」で伊豆原先生が話した内容である。

 

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昨日も3年生には少し話をしたんだけど、みんなにも話しておきたくて。
……やっぱり負けは負けなんだよね。現実として7−1っていうさ、完敗なんだ。完敗。

凄く頑張ったねとか、川和の力を見られたとか、凄い称賛の言葉も多くあったと思う。それはそれで素直に喜んでいい。君たちが頑張った証なんだから。これは3年生だけじゃなくて2年生も1年生も自信を持っていいところだと思う。



なんだけど、最終的にはやっぱり7−1なんだよね。そこはやっぱり受け止めなければいけないんじゃないかと思う。その差を、2年生、1年生は実際に目の前で見て、どうやって埋めていったらいいのか、これから目指すべきはそこだと思うんだよね。埋めるために自分がどうやって、どうあるべきか? しっかり考えてみて欲しいところだと思う。

結果的に勝てるかどうかではなくて、勝つために自分自身がどうあるべきか? 勝ち負けは運も関わってくる話だから、そこはさ、またちょっと違うかもしれない。けれど、勝つことを目標にして頑張ること、努力すること、色んなものを重ねていくことって誰でもできることだと思う。到達できるかは分からないし、勝ち負けということだけにこだわれば、それは難しいかもしれない。ただ、勝つことに目標をおいて、相模との試合を、あの9回のあと2アウト分をどうやって自分たちで埋めていくのか、その差をどうやって埋めるのかっていうことを考えて野球をやる。受験勉強だってまったく一緒じゃん? 自分自身がいま、どこに向かってどういう目標で頑張っているのかっていうのと、何にも変わらないと思う。

じゃあ勉強はできて野球はできないのか? 勝てる勝負しかしないのか? 人生で、(ときには)負ける勝負でも、それでも勝負しなければいけないときってある。そうなったとき、君らはそこから逃げるのか?

負けることがダメなんじゃない。勝つ者がいれば負ける者は絶対にいる。good loserだよ。要は「素晴らしい負け」というのもあるんだよ、昨日の試合みたいに。

最初からgood loserを目指すのではない、勝ちに行ったからこそgood loser、「良き敗者」になれる。そこは受験勉強だって野球だって変わらないと思う。ぜひそこをみんなには分かって欲しい。勝利を目指して積み重ねるものがいかに大事なものか、いかに大切なものかっていうことを、3年生はちゃんと身をもって示してくれたと思う。ぜひそれを噛みしめて新チームはスタートして欲しいと思うし、3年生はその気持ちを今度は受験に向けて欲しいと思う。



やっぱり負けなんだ。野球で負けたんだ、相模に。やっぱり甲子園は遠いんだ。君たち3年生はもう2度と甲子園を目指すことはできない。どうやっても。プレーヤーとしてはね。けれどその負けをどうやって人生で取り返していくか? 昨日は負けたけど野球だって次のステージがある。人生はもっと長いし、どうやって君たちがこの借りを、一生をかけて返していくのか、跳ね返していくのか。より大きな勝者として輝いていくのかっていうことがものすごく大事。

勝負は野球だけでは決まらない。だけど今この時点では1、2年生の勝負は野球だ。3年生の夏までは野球で勝負なんだよ。その後は平行して準備している勉強で勝負になるんだよ。そしてまた野球をやるチャンスが巡ってきてそして人生のチャンスが巡ってくるようになるわけだ。

表現するものが野球なのか、鉛筆なのか、それとも人生なのかっていう違いだけで、常に勝負なんだよ。それを君たちがどうやって表現していくか、もっともっとやれるんじゃないかと思う。

この先、3年生たちが作ってくれた道を1、2年生は歩んでいく。でも3年生である今の57期生が作ってくれた道というのは56期生が切り開いてくれた道でもある。56期生は55期生を見て切り開いていった道でもある。そこをもっともっと広げて、もっといい道にしていかないとダメ。だから先輩って偉大なんだよ。

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