カラダづくり

怪我、守備範囲、走塁を改善するために! 走りを見つめ直せば野球観が変わる

2021.3.24

正しいフォームでも怪我をする!?

野球の中で一番怪我が起きる場面は、バッターボックスからファーストに走っている時だそうです。秋本さんは「全力を出さなくてはいけない時に怪我が発生する」と指摘します。
「例えば、打ち損じをした時に、何とかセーフになろうと崩れたフォームで思いきり足を動かしてしまう。そういう時が一番危険なんです」。



焦ってしまうと余計な部分に力が入り、フォームが崩れて、怪我につながります。具体的に言えば上半身が前に傾向し、足が前に出てしまう状態。横から見ると体が「くの字」になってしまうのは怪我が起きやすいフォームと言えます。実際に肉離れが起きる選手の、ほとんどがこのようなフォームになっているそうです。
また、そうしたフォームになってしまうと、そもそも速く走ることができません。では、良いフォームとはどういった形を指すのでしょうか、秋本さんは野球のバッティングを例にとり、分かりやすく説明してくれました。



ボールを前に飛ばすには、当たり前ですけどバットにボールが当たった瞬間しかありません。その瞬間にどれだけ力を加えられるかで、打球の勢いは変わってきますよね。これを走りで考えると、地面に足が着地した瞬間になります。それ以外の時に身体を前に進ませようと思っても意味がありません。速く走ろうとして身体を前に倒したり、足を前に出そうとするケースが見られますが、意味がありません。肝心なのは、足が着いた時に、どれだけ力を加えられるか。つまり、走りもバッティングと一緒なんですよ」。
大事なのは、適切な場所に足を置けられるかどうか。それは前ではなく、身体の真下だと秋本さんは言います。

バッティングも身体の近い場所でバットを振ったほうが力が加わり、ボールが遠くに飛ぶと聞いたことがあります。それと同じで、自分の身体の真下に足を着地させることで、地面に力が加わりやすくなり、前に進む力が生まれてくるのです。空き缶を踏みつぶす時に、どこに置きますか? 身体から遠いところにあると、踏み潰すことができません。真下にあるから、空き缶を踏み潰せる。なぜなら、一番力が入る位置だからです」。
秋本さんは、正しいフォームを身に付けるだけで、足が速くなるわけではないと指摘します。
「適切な場所でバットとボールが当たったとします。でも自分の力が弱かったらボールは飛びません。大事なのは、加えた力を自分の土台で支えられるかどうか。つまりベースとなるフィジカルがなければ、速く走ることはできないのです」。



土台作りには様々な筋肉を鍛える必要がありますが、秋本さんは「大きな筋肉が集まっている場所」を一番鍛えるべきだと言います。
具体的には、お尻や背中、お腹ですね。早く走るためには太ももやふくらはぎも大事ですが、身体を支える大きい筋肉をどう使うかが重要となります」
これは秋本さんの実体験に基づいた見解です。良いフォームを意識しても怪我をしてしまったことがあり、支える筋肉の重要性を痛感したそうです。
「私も実際に半月板をやってしまった時がありました。なんでそうなったといえば、土台作りをやらずに走ってしまったから。地面に効率よく力を加えても、支える筋力がなかったので、膝やふくらはぎにダメージが蓄積されてしまったのです。その経験を踏まえて土台作りを意識するようになりました。その結果、怪我もなくなりましたし、現役を引退して7年経ってもまた10秒台で走れるようになりました」。

走りを改善することで肉離れも予防できる

良いフォームを意識することと、良いフォームを保つための土台作り。この両輪で取り組んでいくことこそが、速く走ることだけでなく、怪我の防止につながるのです。
足が速い選手で肉離れや怪我をする選手は少ないんですよ。それはしっかりとした土台に支えられた良いフォームで走っているから。つまり、速く走ることと怪我をしない走り方はイコールで結ばれます。着地する場所と、それを支える土台作り。ぜひ、この二つを意識してみてください」。




スプリントコーチ 秋本真吾さん
1982年生まれ、福島県出身。2012年まで400mハードルのプロ陸上選手として活躍。200mハードルのアジア最高記録、日本最高記録、学生最高記録を樹立(当時)。オリンピック強化指定選手にも選出。100mのベストタイムは10秒44。引退後はスプリントコーチとしてプロ野球チーム、サッカー日本代表選手、Jリーグ選手、なでしこジャパン選手、アメリカンフットボール、ラグビーなど500名以上のプロスポーツ選手に走り方を指導。日本全国の小中学校でかけっこ教室を開催。これまで7万人以上の子どもたちへ走り方を指導している。
走りのオンラインサロン「CHEETAH」主宰。


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