バッター勝負の心意気が腕をしっかり振らせる意識を高め、今夏の福井大会ではこれまでストレートの最速は139キロから3キロ更新の142キロをマークした。そして今夏の甲子園では最速145キロを計測したが「自分ではそれだけ速いボールを投げたと思えないんです。甲子園はスピードが出ると聞いてはいましたけれど、最初は(スピードガンの)誤作動じゃないかと思いました(苦笑)。ただ、甲子園はアドレナリンが出る。腕を振ったら振った分だけスピードが出るということも分かりました」と笠島は言う。
中学時代は、ストレートはそれほど速くなく「スライダーで勝負するタイプだった」(笠島)という。高校入学時のストレートの最速は128キロ。それが入学後の体作りなどで体重が増え、1年の夏までには135キロを計測した。2年の夏は138キロまでスピードが出た。段階を踏みながらスピードが上がっているのだから、甲子園での145キロは頷ける部分が大きいが、今後は敢えて欲を出し過ぎずに、自然体で勝負するつもりだ。
「(今夏の甲子園で)2勝できたことはものすごく自信になりました。県内の他のチームの選手が経験できなかったことを、自分はこの夏経験させてもらったと思っています。あれだけすごい舞台に、来年もライバルのチームに行かせたくない、という気持ちはあります。自分にしかない武器があるので、来年に向けてはそこをもっと伸ばしたいです。今、球種はスライダーとカーブとチェンジアップですが、球種をもっと増やしたいです。ストレートは何がどうというより、もっと伸びると思って練習していきたいです」。
ただ、春の北信越大会の再戦となった今秋の北信越大会の準々決勝・日本航空石川戦で先発したものの、立ち上がりから細かい制球に苦しんだ。3回に先制を許すも、味方が何とか追いつく展開で、試合は1点を争う接戦に。だが、8回にエラーと死球などでピンチを背負い、4番・嘉手刈浩太の犠飛で勝ち越しを許すと、5番の毛利水樹に試合を決める痛恨の3ランを浴びた。決して調子は悪くなかったと本人は言うが、ピンチからあっさりと失点する場面が散見され「粘り切れなかった」と悔やんだ。東哲平監督も「ランナーが出ても、盗塁をされて何も出来ていない。投げるだけのピッチャーになっていた」と笠島に対し苦言を呈した。春以降、成長曲線を描いていた矢先の安定感に欠けた今秋のマウンドを、エースはどう受け止め、前を見据えていくのか。長い冬を前に、笠島は大きな宿題を持ち帰ることとなった。(取材・写真:沢井史)
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