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【敦賀気比】奥川とも投げ合った、プロ注目右腕笠島尚樹が持ち帰った「宿題」

2019.10.25

淡々と投げ込む姿の中に、打者へ向かっていく闘志も感じる。敦賀気比では1年春からベンチ入りし、その芯の強さは下級生時から目を見張るものがあった。1年生だった昨夏に甲子園のマウンドを経験するも、1イニングで3失点。ホロ苦いデビュー戦ではあったが、今となっては笠島にとって、このマウンドがスタート地点となった。

入学直後は1年先輩の木下元秀がエース番号を背負っていたが、木下が左ヒジを痛め、戦線離脱する中で台頭したのが笠島だった。今春の北信越大会では、初戦の日本航空石川戦で強力打線を散発4安打に封じ込め無四球完封を収めた。ストレートとスライダーを厳しいコースに投げ分けての快投だったが、大会前にフォームを変えたことが功を奏した。
「冬場からフォーム固めに時間をかけていたんです。それまではどうしても体が前に突っ込み気味だったので、体重を後ろに残すために足の上げ方を変えました。直すのに時間がかかりましたが、春になって新しいフォームの感覚が掴めだして、あの頃はようやく思うように投げられるようになりました」。

決勝戦では奥川恭伸(星稜)と投げ合ったことも笠島の意識をより高くした。
「奥川さんのピッチングは、ギアの入れ替えやストレートの球質、スライダーのすごさなど見ていて衝撃的なことばかりでした。聞いてはいたけれど、スライダーが本当に手元で消えました。これが全国レベルのピッチャーなんやって。あんなすごいピッチャーと、決勝戦で投げ合えたことは光栄です」。

自チームの4番の木下元秀が打席に立つとギアを入れ、実戦マウンドから2カ月近く遠ざかっていても150キロを超える速球をコースに投げ込んでいた奥川。以降は、打者を見ながら力の出し入れを意識するようになった。そして笠島がもうひとつ注目したのは球数の少なさ。「どの球種でも勝負ができて、厳しいコースに確実に投げられて、ストライクが取れる。だから球数も少ないし、それだけ体に負担がかからない。自分もコントロールで角っこ(四隅)を意識するようにしました」。

ただ、笠島もインコースへの制球力は誰にも負けない。前述の日本航空石川戦では、欲しい場面でしっかり三振を奪えたのも、打たせたい場面でゴロを打たせることができたのも、絶妙な制球力があったからだ。特にピンチではほとんど見逃し三振を奪っていた。ただ、春の北信越大会での自信を夏の大会のマウンドに生かしたいところだったが、笠島いわく福井大会は「絶不調だった」という。一体何が原因だったのか。
「自分と戦ってしまっていました。バッターとちゃんと見ていないって、試合が終わってからの取材で、監督が記者さんへの質問に対して怒るように言っているのが聞こえて…。これではアカンと思って、打者をちゃんと見ないといけないと思いました」。


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