OBの細やかな指導と親子で取り組んだ食トレ。
森脇監督は昭和60年から平成7年に監督を務め、一旦は他校に赴任するも平成19年から鳴門高校の監督に復帰した。2度目の監督就任以降の12年間で9回の甲子園出場を果たしている。古豪を再び甲子園常連校に導くために、就任以来新しい取り組みも積極的に行った。
その一つが、元プロ野球選手を含む同校OB4名の外部コーチを招聘したこと。打撃、守備・走塁、バッテリーなど個々に担当を持って指導してもらい、選手のスキルアップを行った。
もう一つ、平成29年秋から取り組んだのが食トレだ。きっかけは平成29年10月の第70回秋季四国地区高校野球大会で、徳島県の第一シード校でありながら、香川県の高松商業高校に5対9で逆転負けを喫したこと。後半に粘り切ることができない選手たちを見て「何かが足りない」と考えた森脇監督は、以前から導入を検討していた食トレを行うことを決意した。「食トレのためには保護者の協力が必要不可欠。幸いなことに、皆さんが賛成してくださり、本格的に食トレに取り組むことができました」。
「親への感謝で自覚がついたことは間違いありません」と森脇監督。食欲がないとき、無理をしてでも食べたり、逆に食べたいものを我慢したりの経験が、精神面での成長に結びついた。「(食トレで)これだけ頑張っているのだから、ちょっとやそっとのことではへこたれないぞ」というような気概が部内に満ちてきた。
その結果、第100回全国高校野球選手権徳島大会においては、初戦の城南高校戦では13対9で敗色濃厚だった8回裏に4点を取って同点に追いつき、最終回に1点を加えてサヨナラ勝ち。準決勝の富岡西高校戦では、10対6で迎えた9回裏、一挙5点を取り大逆転サヨナラ勝ちする。課題であった終盤の粘りで、決勝も制して、徳島県代表として夏の甲子園への切符を手に入れることができた。
食トレの効果は思わぬところにも出た。食トレ導入後、風邪やインフルエンザで休む部員はゼロ、徳島大会から甲子園まで、熱中症の症状を見せる選手も一人もいなかったという。
森脇監督は、高校卒業後法政大学へと進学したが、選手ではなく、チームマネージャーとして野球部に所属していた。裏方としてチームを支えた経験が、現在の柔軟なチームマネージメントに役立っている。もう一つ大きなのは人脈。実は食トレについても、他校の監督から情報を得て導入に踏み切ったという経緯がある。「培った人脈のお陰で、最新の情報を得ることができています」。