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【日大鶴ヶ丘】徹底した意識改革で時短を図る|時短テク(後編)

2018.10.24

大学野球部でのコーチ経験を生かしてルールについて学ばせる

大学卒業直後から長く監督を務める萩生田博美監督
日本大学を5年かかって卒業して、1997年の4月に日大鶴ヶ丘の監督になりました。当時は大学を出たばかりで若かったですから、練習がとにかく長かったです。遅いときは22時くらいまでやっていましたね。ただそれでも結果がなかなか出ませんでした。そこでふと思い出したのが大学の時の話だったんですね。大学5年目の年は野球部のコーチをしていたのですが、その時に学んだことが非常に多かった。当時の鈴木博識監督(現鹿島学園監督)はとにかく野球のことをよく知っている人で、まずはルールからしっかり学ばせました。自分も高校までは知らないことだらけだったなと大学の時改めて思いました。まず公認野球規則の最初に何が書いているかも知らない。よくそれでプレーができていたな、と。鈴木監督が作った『100カ条』というベースあったので、それをアレンジしてうちは107カ条を作りました。

107カ条の教本を活用して監督と選手のビジョンを合わせる

鈴木監督からもう一つ重要だといわれたのが選手との会話です。一度練習を見にいらっしゃった時に「選手と話をしてるか?」と言われたんですね。そう言われて話をしようとしても、いきなり何をどう話せばいいかが分からないんですね。そこでさっきの107カ条が出てくるんですよ。こういうことを知っているか? こういう場面ではどうしたらいいと思う? そういった投げかけををすると、会話のきっかけになるんです。

例えば野球の歴史の話や球場の日当たりの話なんかもします。そういうところから話はどんどん膨らんでいきますから、いくらでもネタはある。しっかりとテキストにしてまとめること、監督と選手が共有してそれをもとに会話をすること、そうすることで監督が見ているビジョンと選手が見ているビジョンがずれなくなりました。結果が出始めるようになったのはそれからだと思います。




スキルアップは個人練習全体練習はあくまでも確認の場

練習時間については最初にもお話しましたが、もともと短かったわけではありません。2001年に大阪の小学校で不審者が侵入した事件があって、それからうちの高校もセキュリティが厳しくなり2004年頃からは今のように19時に完全下校となりました。そこから発想を変えないと思って取り組むようになりましたね。

最初にバッティング練習からスタートしますけど、守っている選手はあくまで守備練習だという考えで取り組んでいます。投げる選手もバッティングピッチャーではなくピッチャー。キャッチャーもサインを出して、実戦を意識していやっています。全体練習は何か一つのことをやるというものはないですね。ランナーをつけての練習も守っている選手は守備練習になりますし、ランナーにとっては走塁練習になります。これも教本にあらゆるパターンの動きをまとめていますから、それに沿って動くようにしています。全体練習は、週末に練習試合をして出てきた課題や今取り組むポイントを確認する、という意味合いが強いです。

野球は走攻守の要素がありますし、スキルを上げるには反復練習は欠かせないので時間が長くなるのは当然なんですね。ただそれを全員で揃ってやる必要はないと思います。そういった個人のスキルを上げるための時間は朝錬や全体練習が終わった後に各自で取り組むこと。だから朝錬も7時半からスタートとは言っていますが、もっと早く来ている選手もいます。

最終的には野球は「判断力」が大切になるスポーツです。107カ条にあらゆることをまとめていますが、それを実戦の場でどう出せるかがポイントですし、その場その場で判断して動くのは選手です。そのために普段から野球の知識、想定した動き、そういったものを磨いていくことが重要だと思っています。
(取材・文=西尾典文 写真=磯貝琢哉)

日大鶴ヶ丘 DATA

●監督/萩生田博美●部長/津田寛行●部員数/2年生30人、1年生39人、マネージャー6人
1955年創立。野球部は1990年に創部初、その後は2008年、2014年と合計3回、夏の甲子園出場を果たしている。2018年の全国高等学校野球選手権大会西東京大会では、決勝で日大三に3−5で敗れ、惜しくも甲子園への切符を逃した。

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