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【高校野球で観察眼が生かされたプレー】2008年|常葉学園菊川(静岡)×福知山成美(京都)

2018.4.13

第90回全国高校野球選手権大会 2回戦
常葉学園菊川(静岡)×福知山成美(京都)

プロ野球に比べるとデータが少ない高校野球。しかし、それでも観察眼を発揮できる場面というのはたくさんある。ここでは高校野球で実際にあった観察眼が生かされたプレーをタイムリーでもおなじみの高校野球データライター西尾典文氏に紹介してもらった。


【戦評】

強力打線で優勝候補の一角と見られていた常葉菊川は5回までノーヒットと苦しんだが、先制を許した直後の8回表に一瞬の隙を突いて見事に逆転。エースの戸狩も6回、7回はマウンドを譲るなど苦しんだが要所を締めて接戦をものにした。

試合前に気づいた弱点、代走が見せた観察眼

田中健二朗(現・横浜DeNA)を擁し、前年のセンバツで優勝を果たした常葉菊川。今大会が四季連続の甲子園出場であり、大会屈指の強力打線が自慢のチーム。一方の福知山成美はエース近藤とサウスポー植田の二枚看板で勝ち上がってきた守りのチーム。地方大会で近藤が指を痛めたこともあり、この試合は背番号9の植田が先発となった。

試合は常葉菊川有利という大方の予想を覆し、植田が見事なピッチングを披露。5回まで相手をノーヒットと完璧に抑え込んだ。一方、常葉菊川のエース戸狩も再三のピンチをしのぎ、投手戦の展開となった。試合が動いたのは7回裏。福知山成美が四番高久のタイムリーヒットで1点を先制する。常葉菊川の残す攻撃はあと2イニングとなり、絶体絶命のピンチ。しかし、ナインに焦りの色はまったく見えなかった。なぜなら、試合前に福知山成美のシートノックを観察し、ある弱点を見抜いていたからだ。必ずいつか綻びが出るという確信があった。

迎えた8回表。先頭の戸狩が出塁し、ワンアウト二塁のチャンスをつくる。続く代打の北島が粘りを見せて四球を選ぶと、戸狩がすかさず三盗を決める。ランナーが投手の戸狩ということもあり、捕手が見せた一瞬の隙をついた。ワンアウト一、三塁となり、一塁走者の北島に代走の松本が送られる。松本は一番酒井の4球目にスチールを敢行。捕手の福本がセカンドへ送球するも、ボールは逸れてセンターへ。三塁ランナーの戸狩がそれを見てホームイン。試合は1対1の同点となるが、このプレーはそれだけで終わらなかった。盗塁した松本は捕手からの悪送球の間に三塁へ。ここで松本の観察眼が光る。センターから内野への返球が緩いことを確認すると、一気に本塁へ突入したのだ。福知山成美の守備陣が慌ててホームへ送球したものの松本は楽々と逆転のホームイン。試合はその後の2回を戸狩が完璧に締めて2対1で常葉菊川が逆転勝ちを収めた。

試合後、観察眼を発揮し殊勲の好走塁を見せた松本は「試合前から緩慢な守備が多いと気づいていました」とコメントしており、シートノックのときに観察して得た情報が、試合を決める走塁をもたらした。強力打線が沈黙してもワンチャンスをものにできるしたたかさと、試合開始直前まで相手を徹底的に研究する観察眼があったからこそ、この年の準優勝という結果に繋がったと言えるだろう。

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