学校・チーム

【福岡大大濠】八木啓伸監督|大濠スタイルを一新させた浜地真澄の存在 すべてのきっかけは、2016年の夏にある

2025.6.18

甲子園を勝つには全国レベルの2枚目、3枚目の投手が必要



━━しかし、福岡県の夏はシード校でも7試合、終盤の県大会に突入すると、10日で5試合というハードな日程が待っています。100%を維持するのは大変ですよね。

実際にその通りで、ベストを維持する難しさは感じますね。初戦からベストで突っ込んで行くことで、今度はコンディショニングという新たな課題が生まれました。やはり夏にMAXの状態で1か月を過ごすことには無理がありますから。車で例えるなら、アクセルをベタ踏み状態では故障をきたしてしまいます。そこはアクセルの強弱を付けていかなければなりません。もちろん選手はどの試合もベストで臨むものなので、そのアクセルワークは私自身がしっかり行うべきです。最大出力を発揮させながら、緩めるところは緩める。その感覚は持ってやっているつもりです。

━━甲子園には2017年、2021年と春2度の出場で、いずれも8強進出を果たしました。ここで得た教訓や、見出した敗因もあるかと思います。

2度の甲子園とも、二つは勝つことができているのですが、三つは勝てていません。痛感したのは投手力が足りなかった、ということです。全国でも通用するふたり目、3人目の投手を育てておかないと、なかなか3つは勝てないのが今の甲子園です。2017年の時は三浦、2021年は毛利海大(明大)という絶対的なエースがいました。彼らがすごく良い投手だったことは間違いありませんが、ひとりエースにはやはり3試合目に大きな壁が待ち受けているのです。そこを突破していくためにも、やはり複数投手が必要だなと肌で感じました。

━━三浦投手の2017年は、2回戦の滋賀学園戦で延長15回、引き分け再試合を経験されました。引き分けとなった試合で三浦投手は196球を投げ15回を完投。中1日空けての再試合は9回130球の力投で勝利。しかし、翌日の準々決勝は三浦投手が登板せずに3-8で報徳学園に敗れています。あの時も三浦の起用を巡って、いろいろ苦悩されたと察します。

延長15回完投も、2日後の再試合での先発も、三浦の体の状態、心の状態、それからチームの思い……。いろんなものを感じ、汲み取って決断しました。登板を回避した準々決勝も本人は行く気満々で“どうして自分じゃないんだ⁉”と思っていた様子でしたけどね。ただ、あの時は優勝したいという共通の思いがチーム全体にありました。だから準々決勝はチームで乗り切らないといけないワンゲーム。三浦を登板させずにみんなで勝ち切ろうよ、と。そういう判断のもとでの回避でした。もちろん疲労も考慮しました。今でもあの時の判断が間違っていたとは思いません。チームとしての目標は、あくまで「優勝」でしたから。そのためにはエース抜きで勝てることを証明しなければならなかったのです。

━━三浦・古賀の高校日本代表バッテリーを中心としたチームは、秋の九州大会で優勝。代をまたいだ春秋連覇を達成しています。センバツ8強ののち、夏は福岡県の決勝で東筑に1-3で敗れてしまいました。三浦投手は全7試合中6完投と、ほぼひとりで投げ抜きましたが、最後は力尽きてしまいました。

やはり最後の最後で負けてしまった時には、2枚目以降の育成という課題を突き付けられた思いがしましたね。あの代以降は、常に複数投手を育成していかなければと思っています。2024年には柴田獅子(日本ハム)、平川絢翔(立正大)という理想的な2枚が揃いました。ふたりはいずれも140キロ台後半を投げる柱に育ち、ダブルエースとして夏に頑張ってくれました。そういう意味では、複数投手の育成という点でも、少しずつ成果が出ているのではないでしょうか」(取材・文:加来慶祐/写真:編集部)

(後編へ続く)

関連記事

  • 1
  • 2


PICK UP!

新着情報