強みは〝ここぞ〟の場面の集中力
もう一つ福島監督がチーム作りをしているうえで考えるようになったのは、対戦相手との力関係や、自分たちの強みの部分だという。
「東東京だけでも強いチームはいっぱいあります。帝京さんの打線は凄いですし、関東一校さん、二松学舎さん、単純に比較したら力は向こうの方が上ですよね。それに勝とうと思ってやみくもにやっていたのが昔だったと思います。でもそれでは当然勝てない。じゃあ自分たちがどう戦えばいいのか、勝てる部分はあるのか、そういったことをよく考えるようになりましたし、選手にも言うようになりました。うちの選手たちの強みを考えると、勉強もしっかりしないといけない学校なので基本的に真面目な子が多いんですよ。トレーニングをやるっていっても、しっかり数字の目標を決めて、それに向かってできる。そういう部分はやっぱり強いですよね。あとはここぞという時の集中力がある。ずっと相手を圧倒できなくても、ワンチャンスで勝てることもあります。そんなことはよく意識していますし、選手にも話はします」
この春の東京都大会でも、それを裏付ける試合があった。それが4回戦の東京高校戦だ。相手のエース、永見光太郎はプロも注目する好投手で、3回戦では二松学舎大付を相手に被安打3、1失点で完投勝利をあげている。そんなピッチャーと対戦する時に、福島監督が選手たちに話した内容はこんなことだった。
「相手のピッチャーがいいというのは当然知っていましたけど、選手たちがそれに対して凄く意気込んでいたんですね。でもちょっと待てと。『二松学舎相手に3安打だよ、うち二松学舎より打線強い?』っていうことを話したんですね。意気込んで打てれば苦労はないけど、そうじゃないよねと。じゃあまずは何をするべきかと言ったら、相手の打線をしっかり抑えて守ることが大事だという話をしました。結果として得点は入りましたけど(7対0で日大豊山が勝利)、決して打ち崩したわけではないです。良いところで一本が出たというのはありましたけど。だから常に相手との力関係、自分たちがその中で何を重要視するかというのは意識するようにしていますね」
福島監督の話で印象的だったのは、やり方はそれぞれ違って、日大豊山には日大豊山のやり方があるというところだった。またそのチームに合う選手というのも確実にいるということも話していた。最後に日大豊山の野球部に合う選手について聞くと「自分で考えて行動できる選手」という答えが返ってきたが、練習の雰囲気を見てもそれは強く伝わってきた。
監督も選手も無理なく自然体でやりたい野球をやる。そんなチームが夏にどんな戦いをみせてくれるかにぜひ注目してもらいたい。(取材・西尾典文/写真・編集部)
関連記事
-
【日大豊山】福島直也監督|自分がまず楽しく、面白く感じるやり方をやる2024.6.21
学校・チーム -
【共栄学園】原田健輔監督|きっかけは選手の拒否反応、見直した体作り2024.5.17
学校・チーム -
【共栄学園】原田健輔監督|同じことを続けていては・・・思い切った方針転換2024.5.10
学校・チーム -
【修徳】慶応ボーイの指揮官と下町の野球小僧たちが目指す、10年ぶりの頂点2023.7.12
学校・チーム -
【修徳】下町の巨漢右腕・篠崎国忠、キャチボールで掴んだ「リリースの感覚」2023.7.7
選手 -
【帝京】夏までに不安な部分を少しでもなくす2022.6.10
学校・チーム -
【都立新宿】春に旋風起こした「文武両道」の伝統校2022.5.25
学校・チーム -
【小山台】結束力のルーツは「ボトムアップ」。創部最多の111人で挑む夏2020.7.22
学校・チーム
- 1
- 2