今も悔いる、エース種市を温存して敗れた準々決勝
――今年の金渕投手を含め、歴代のプロ注目投手はみな中学軟式野球部出身ですね?
そうです。共通しているのは軟式出身で、細身ということ。ガリガリの投手の投げ方を直して(体を)ふくらませば、伸びるなと。中学時点でガッチリしている投手は、伸びしろがあまりないと感じています。内沢なんて190センチ、67キロで球速は120キロそこそこでした。種市も中学の頃はガリガリでしたからね。
――今年の金渕投手もプロ注目の左腕になりそうです。
中学時代は勧誘に行って何回も断られて、校長先生に「顔だけでも見せてください」とお願いして、やっと話を聞いてもらえました。右打者のインコースに食い込んでくるフックボールは、かなりいいと思います。彼は工業科の電気コースに在学していまして学業成績もよく、国家資格の電気工事士に合格しています。屋内配線工事のできる高校生投手なんて、なかなかいませんよね(笑)。
――投手指導に関して、「こうしておけばよかった」という後悔はありますか?
一番は種市が高校3年だった夏の青森大会の投手起用です。準々決勝で春のセンバツに出た青森山田と対戦すると想定していたのですが、青森山田は直前に伏兵の大湊に負けてしまった。種市は腰に不安があったので、「準決勝、決勝は種市でいこう」と決め、大湊との準々決勝は2年生の古屋敷を先発させました。でも、当日は雨で足場が悪く、パワーピッチャーの古屋敷には酷なコンディションでした。結局、種市を投手として使うことなく負けました。大会前から「準々決勝は種市でいく」と決めていたのに、色気を出して失敗した。大湊は青森山田に勝ったチームなのに、青森山田より劣ると見てしまった。今でも後悔しています。
――組織力を高めるため人間教育に力を入れ、個々の能力を高めるため肉体と技術を強化してきました。毎年のようにプロ注目選手を育成して、そろそろ結実の時を迎えても不思議ではないように感じます。
八戸学院光星に2年連続で敗れていますし、「もうええやろ」と思ってしまうのですが(笑)。野球の神様が「まだ足りない」と言っているのでしょうね。それでも、今年はバッテリーを中心とした守備力を武器に八戸学院光星と青森山田の2強を超えていきたいですね。(取材・写真/菊地高弘)
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