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「高校野球監督がここまで明かす!投球技術の極意」長谷川菊雄監督|八戸工大一

2021.10.25

打撃技術の向上により140キロを超えるボールでも打ち返されるようになった近年の高校野球。そこでより大事になるのがピッチャーの育成ですよね。
今回から数回にわたりスポーツライター大利実氏の書籍「○○技術の極意」シリーズから『高校野球監督がここまで明かす!投球技術の極意』の一部分を紹介します。今回登場するのは毎年のように本格派右腕を育てている八戸工大一の長谷川菊雄監督。どんなピッチャー育成を行っているのでしょうか?


投手にとってもっとも重要なのは球速を生み出すポイントは体重移動

 長谷川監督自身、球速へのこだわりはどれほど持っているのだろうか。地元のスポーツ新聞には、「『剛腕製造工場』の異名を持つ長谷川監督」と紹介されていたこともあった。
「ボールの速さは、一番重要だと思っています」

一番ですか……!
「もちろん、コントロールも必要ではありますけど、スピードがあれば多少のボール球でも手を出してくれますから。バッターにとって見極める時間が短くなることは、芯でボールを捉える確率を減らすことにつながる。スピードがあったうえで適度に荒れているぐらいのほうが、抑えられる印象はあります」

ストライクを取るために置きにいく気持ちで投げるなら、腕を目一杯振って勝負を挑む。絶対的な球速のレベルを上げておかなければ、八戸学院光星や青森山田の強打線を抑えることはできない。

ならば、球速を生み出すためのポイントはどこにあるのか——。
「下半身の使い方にあると思います。具体的に言えば、体重移動。よく、『軸足の股関節に乗せなさい』という指導がありますが、それを意識するあまりに沈んでしまうピッチャーが多くいます。沈むのではなく、股関節に入れる。そうすることで、股関節の周りにある大きな筋肉も使いやすくなると思っています」

ただ、「股関節に入れる」という感覚を伝えるのはなかなか難しい。そこで、八戸工大一高では、股関節の可動域を広げる体操を実践している。股関節の動きを意識しながら、骨盤を右回り、左回りに動かしていく。
「私の考える体重移動は、最初に軸足一本で立ったのであれば、最後は踏み込んだ前足で立つ。その基点となるのが股関節で、『股関節の入れ替え』と表現しています」

本格的なピッチングに入る前には、通常のステップ幅よりも狭めたスタンスで、股関節の入れ替えを意識したキャッチボールを取り入れている。両足を固定した状態で、あえて動かさない。両足が地面に接地しているほうが、股関節を入れ替える感覚を掴みやすいメリットがある。

股関節の動きを高めたあとには、同じスタンス幅のまま、前足の股関節にすべての体重を移し替えていく。軸足(右ピッチャーの右足)の裏が空を向くぐらい、跳ね上がってくるのが理想となる。そして、跳ね上がった軸足が前足を追い越し、キャッチャー側に着地する。
「最終的には股関節を入れ替える流れで、右ピッチャーであれば右足がキャッチャー方向にまで踏み出される。ピッチャーからキャッチャー方向に一本のラインを引いたとすれば、右足も左足もすべてライン上に乗ってくるように、指導しています。とにかく、体重が後ろに残るのがイヤなんです。速い球を投げることを考えたら、体重を前足に乗せ切ったほうがいいのかなと思っています」

ただ、このときに右ピッチャーと左ピッチャーで違いを感じるそうだ。
「左ピッチャーは、最後のフィニッシュでちゃんと立てない子が多いんですよね。だから、コントロールが暴れるのかなと。それが左ピッチャーの特徴なのかもしれません。足がぶれる子には、『ピッチングマシンでも、下を固定しているから、安定した球が投げられるんやろう。フィニッシュで流れるのは、固定していない状態のマシンと一緒ちゃうん?』と言っていますね」


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