ギア

和気閑谷高校“障がい者用グラブプロジェクト”
すでに完成済みの2つのグラブをご紹介!

2021.11.22

2つ目は握力が弱い選手でも捕球しやすいグラブ

2021年6月に第二弾となるグラブが完成。特注のグラブが贈られたのは、早嶋さんと同じく「岡山桃太郎」で活躍する箕輪遥介選手(高校1年生)。箕輪選手は、手足の筋力が弱まる難病で、握力は両腕ともに2キロほど。そのためグラブは手に差し込んでいるだけの状態だった。一塁選手のため、投球の負担は少ないが、握力が弱いためゴロをしっかりつかめないのが悩みだった。

そこで選手たちは、弱い握力でも開閉しやすいグラブを提案。革を薄く削り、軽くて柔らかいグラブにすることで、握力の弱さをカバーした。それだけではない。グラブの内側の網目部分に“返し”という引っ掛かりを作ることで、今までは難しかった逆シングルでの捕球が可能になった。
 

箕輪選手のグラブ。網の部分(左上)に山型のような返しがついている。

グラブの特徴
★ 革を従来より薄く削ることで、通常の2割〜3割軽い430gを実現
★軽くて柔らかいグラブにすることで捕球がしやすくなった
★手から抜け落ちるのを防ぐため手首に固定するベルトをつけた
★捕球する網の部分(ウェブ)には、ボールが引っかかりやすいように「返し」がついている


箕輪選手にインタビューをしてみた。

—グラブの特徴やこだわりについて教えてください
握力がないないので、捕球する時にボールが落ちてしまうのが悩みでした。そこでボールが引っかかるようにグラブのウェブの所に返しをつけてもらいました。それとグローブが手から外れるのも問題だったので、手首をベルトで固定するアイデアを和気閑谷のみんなが考えてくれました。


改良したグラブを手にして守備での不安が軽減されたという箕輪選手。ただ打撃では「握力が弱いので思いっきり振った時にバットが飛んでいくことを警戒して全力で振れない」と悩みを話してくれた。グラブだけではなく、バッティングを補助してくれる道具も選手は求めている。

—特注グラブを初めて装着したときの気持ちは?
今まで使っていたグラブより、だいぶ軽くなったので手首への負担が軽減された気がしま した。

―グラブに「感謝」と「起死回生」という文字を入れましたね。
今回のグラブはクラウドファンディングで、全国のみんなからお金を集めて作っていただいたものです。協力してくださった人たちにお礼を伝えたくて「感謝」を入れました。「起死回生」は好きな四字熟語です。サヨナラ勝ちのように、野球は最後まで何があるか分からないのでこの言葉を入れました。



選手全員が出したアイデアから採用された2つの案。

グラブプロジェクト、今後はどうなっていく?

現在は、県外選手からのオファーも含め、4人の選手からグラブ製作の依頼がある。取材 したこの日は、選手、マネージャーの4人と柴谷監督が集まり、2021年度のグラブ制作会議の真っ只中。

まずは一人ひとりがデザイン画に描いてきたアイデアを発表。機能性はもちろん、女子マネージャーからは、ビジュアル面のカッコよさについての提案もあった。柴谷監督は選手の意見をまず受け入れ、実現に向けてどうしたら良いのか次のステップを伝えていた。正解のないグラブ作り。だからこそ、自由に色々な考えを提案しながら、ブラッシュアップしていく様子が印象的だった。


取材した日は関西のチームでプレーする選手のためのグラブ作り第一回目の会議。自由な発想でグラブについてアイデアを出す選手たち。

例年、グラブ作りは秋ぐらいからアイデアを出し合い、11月の中盤〜後半にかけて、実際 に使用する選手と話を詰めていく。そこから森川さんが約3ヶ月かけて作成する。現在、グラブ作りの費用は、2020年12月~21年2月5日まで行ったクラウドファンディングで集めた金額から捻出している。

現在は和気閑谷×タカギスポーツのみで行われている障がい者用のグラブ作り。しかしながら彼らだけでは対応できないほど、全国の障がいを持つ野球選手から専用道具が求められている。

和気閑谷では、このような動きが全国に広がることを願って、これからもグラブ製作活動 を続けていくと言う。


クラウドファンディング返礼品のステッカーと缶バッチ。ストラップ、ブレスレットの小物はグラブ製作の際、端材として余った革を再利用し、選手が一つずつ手作りで作成。普段使っているグラブが牛の命から作られているということを再認識し、ごみを減らし、命を重んじることで、SDGsにもつながる。

 
(取材・文/永野裕香)
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