高校球児が交流のある障がいを持つ野球選手のためにグラブを作った…そんなニュースが注目を集めている。舞台は岡山県の和気閑谷高校野球部。ユニークな取り組みを始めたキッカケやどんな風に開発が行われているのか取材してきました。
グラブ作りを通して考えるようになった「どうしたらできるか」
岡山県の南東部に位置し、瀬戸内の温暖な気候と豊かな自然に包まれる和気(わけ)町。ここに創学351年の歴史を誇る日本最古の学校がある。
岡山県立和気閑谷(しずたに)高校。江戸時代前期、岡山藩主池田光政によって日本で初めて開かれた庶民のための学校「閑谷学校」をルーツとする日本有数の歴史をもつ高校のひとつだ。
同校は文部科学省「地域協働事業」の一環として、2019年の10月から岡山県唯一の障がい者野球チーム「岡山桃太郎」との交流をスタートさせた。交流試合などで関係性を深めるなかで、障がい者用のグラブがないため岡山桃太郎の選手たちが困っていることを知った。
そこで、地元の野球用品メーカーとともに、選手の障がいやニーズに合わせたオーダーメイドのグラブを作りプレゼントする取り組みを行なっている。
すでに岡山桃太郎の2選手にグラブを贈っており、現在は県外も含め4選手から受注しているという。普通の野球部にはないユニークな試み、一体どんな風にスタートしたのだろう。和気閑谷高校野球部・柴谷祐人監督に話を聞いた。
選手が発したヒトコトから始まった
岡山桃太郎と和気閑谷高校の初交流試合。試合は、岡山桃太郎のエース早嶋選手に多くの三振を取られ和気閑谷高校は悔しい敗北を喫した。「この負けにより、生徒たちは障がい者でもこんなにレベルの高い野球ができるんだと驚き、“障がい者だからって特別ではない。自分たちと同じ野球人なんだ”という意識に変わりました。そして、工夫を凝らし野球をする桃太郎の選手を見て驚いていました」。
試合後、早嶋さんが実は故障をしていることを知り、さらに驚いた。
早嶋さんは生まれつき左手首から先がない。ボールを投げる際、左手首にひっかけたグラブが落ちないように気を使うため、フォームが崩れ、右肘の痛みの原因になっていた。
「早嶋君は“痛くない野球がもう一度したい。でも、今の道具を使用する以上、それは無理なんだ”と言いました。すると選手が『道具を作ればいいじゃないですか』と言ったんです」。
無いなら作ればいい。それがすべてのはじまりとなった。