学校・チーム

【津田学園】「全員全力野球」でつかんだ、春夏の甲子園出場(前編)

2019.11.1

今年、創部初の春夏連続甲子園出場を果たした津田学園。どのような練習、どのようなチームマネジメントを経て、春夏の甲子園切符を掴んだのだろうか? 校舎から徒歩10分の場所にある、グラウンドを訪ねてみた。


チームを率いるのは08年に就任した佐川竜朗監督だ。佐川監督は名門・PL学園で3年夏に甲子園に出場し、明大―日本通運と野球界の第一線を歩んできた。指導者を志し、コーチを経て監督に就任してからは、自宅一部を野球部寮にして選手を迎えるなどハード面の整備に力を入れ、グラウンドでは選手たちと本気で向き合いながらチーム作りに奔走してきた。



 1学年はだいたい25人前後で、県外を含めて6人〜8人を寮生として受け入れる。基本的に佐川監督が率先して中学生を見に行くことはほとんどなく、「来てくれる子で頑張る」スタンスだという。だが、佐川監督は「(中学生から)そう思われるようなチームを目指している」と言う。

 ただ、普段の練習時間は1日2時間半〜3時間程度。学校の方針により19時半までに完全下校が定められており、限られた時間の中で常に効率の良い練習メニューを考えながら汗を流している。
「確かに練習時間は短いです。でも、うまく考えながら自分たちで動いてやっていくと、この(最長3時間という)時間も、最近は短くは思わなくなりました」。



 校舎から同じ敷地内のグラウンドまで徒歩で約10分。選手たちはグラウンドに到着すると各自でアップを行い、前日に配られる練習メニューのメモに基づいて動いていく。この日はアップの後、三か所バッティングやティーバッティングなどと班に分かれた。

 17時までにバッティングを終えると、チームがふたつに分かれる。レギュラークラスのメンバー班と、一般的にBチーム、いわゆる二軍と呼ぶ場合もあるが、津田学園ではこれから育ってほしいという意味も込めてBチーム扱いの選手らを「育成」と呼んでいる。
チームは主にメンバー班と育成班のふたつから成り立っており、そこからメニューを分けて練習が始まる。ここでの動きも実に素早く、道具の準備があっという間に終わった。
「うちの部員は半分くらいが中学時代に補欠だった選手。でも、内容のある練習を続ければ補える」

時間をかけてこれ以上ない準備ができればそれに越したことはないが、質を重視し、1球1球にこだわりながら積み重ねていけば得られるものも大きい。そのため、選手たちは1分1秒を無駄にしない。



 チームのモットーは「全員全力野球」。全員がひとつの目標に向け常に全力で向かっていく。前チームは今年、春夏連続甲子園出場を果たしたが、その原点は昨夏の三重大会にあった。初戦で四日市に惜敗し、思わぬ早さで新チームがスタートした。チームの船出の際に佐川監督はナインの前でこう言った。
「この秋は厳しい戦いになる可能性が高いから、この冬どれだけやって夏までに伸びるか。みんなで頑張っていこう」。

力的な部分を見て、じっくりとチーム作りに励むことを伝えたつもりだった。だが、4番の前川夏輝、主将の石川史門らが「秋も勝ちたいので、厳しい練習でも何でも受け入れます」と監督に自ら申し出てきた。そのため夏休みは毎朝6時半には打撃練習を開始。選手らが率先して打ち込む光景がグラウンドにあり、やる気がみなぎっていた。サヨナラ打を浴びたエースの前佑囲斗(オリックス4位指名)も厳しいトレーニングを重ね、最速142キロのストレートが秋に147キロまでアップ。チームは東海大会決勝で東邦に敗れたものの、センバツを経て春の東海大会でも優勝。そこから一気に夏の甲子園まで駆け上がったのだ。(取材・写真:沢井史)

後編に続きます。

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