昨年は春夏連続で甲子園に出場を果たした三重県立いなべ総合学園高校。過去5年間の春、夏、秋の県大会を振り返っても優勝4回、準優勝4回と安定して好成績を残し続けている。そんな東海地区でも指折りの強豪とも言えるいなべ総合の1月の練習を取材した。
いなべ総合を率いるのが尾崎英也監督。四日市工業の監督時代には春夏通算6度の甲子園出場を果たし、井出元健一朗(元中日など)、星野智樹(元西武など)といったプロ選手も指導した東海地区を代表する指導者である。尾崎監督がいなべ総合の監督に就任したのが2006年の4月。年々着実に力をつけ、昨年夏の甲子園では2勝をあげてベスト16に進出するなど見事な手腕を発揮している。
肘と手首の使い方を意識したスローイング練習
その尾崎監督が守備面で特に重視しているのがスローイング。以前の「Timely!Jr #1」でのインタビュー(http://timely-web.jp/article/144/)でもスローイングとキャッチボールの重要性を語っていたが、その考えは変わらないという。
「調べるとエラーの半分以上は送球ミスです。もっと言うと送球ミスはダメージが大きくなるケースが多い。どうやれば送球が良くなるかは常に考えていますね」
スローイングの練習としてこの日行っていたのが真上投げと真横投げ。まず真上投げはベンチの上で仰向けの体勢で横になり、自分の顔の真上にボールを投げるというもの。
真横投げは二人一組で相手に対して横向きになり、ダーツのような姿勢から投げるキャッチボール形式のメニューだ。
いずれもポイントとなるのは肘と手首の使い方。仰向けで自分の真上に投げるには肘と手首を柔らかく使う必要がある。そしてリリースポイントが少しずれるだけでボールがそれることがよく分かるのだ。真横に投げるのはそれに加えて相手に向かって真っすぐ腕を伸ばす必要があり、スナップスローの上達に繋がる。
派生したメニューとして三人で行う真横投げがある。三人で真っ直ぐに並び、真ん中の選手はボールを受けると軽くジャンプして体を反転させて真横投げを行い、それを繰り返す。しっかりと体幹を使うことで、正確さに加えて送球の強さを養おうという狙いがあるものだ。
サッカーボールを使った捕球練習
この日の守備練習としてもうひとつ行われたのが内野手の捕球練習。まずユニークなのがサッカーボールを使うという点だ。二人一組になって一人がボールを転がし、捕球する選手がそのボールに対してグラブを持つ方の足(右投げなら左足)でインサイドキックするというものだ。
この練習でポイントとなるのはボールに対する体の入り方。ゴロに対して正面から向き合うのではなく、グラブを持つ側(右投げなら左側)から入るとバウンドを合わせやすく捕球から送球の流もスムーズになる。そしてサッカーボールをインサイドキックするには必ずそのような動きになるため、ボールへの入り方をイメージしやすいのだ。サッカーボールでの動きを繰り返した後に、実際のゴロを捕球する練習も行ったが、見るからに動きがスムーズになることがよく分かった。
(取材・文:西尾典文)