昨年は春夏連続で甲子園に出場を果たした三重県立いなべ総合学園高校。過去5年間の春、夏、秋の県大会を振り返っても優勝4回、準優勝4回と安定して好成績を残し続けている。そんな東海地区でも指折りの強豪とも言えるいなべ総合の1月の練習を取材した。
いなべ総合を率いるのが尾崎英也監督。四日市工業の監督時代には春夏通算6度の甲子園出場を果たし、井出元健一朗(元中日など)、星野智樹(元西武など)といったプロ選手も指導した東海地区を代表する指導者である。尾崎監督がいなべ総合の監督に就任したのが2006年の4月。年々着実に力をつけ、昨年夏の甲子園では2勝をあげてベスト16に進出するなど見事な手腕を発揮している。
ロープ登り、サーキット、TRXトレーニング
この日は実戦やボールを使った練習以外のトレーニングも行われていた。体幹と上腕を鍛えるロープ登り、
TRXサスペンションを利用したトレーニング、
あらゆる要素のトレーニングを組み合わせたサーキットなどだ。
どのメニューもそれほど時間をかけずに行われたが、特にサーキットは敏捷性、筋力、持久力、柔軟性の要素を取り入れた多くのメニューを8クールに渡って行うもので、独自の名前がついたものもあった。
「新しいものや良いと思ったものは取り入れる」という尾崎監督の姿勢がよく分かるものである。
昨年12月に58歳の誕生日を迎え、キャリア的にも完全にベテランと言える尾崎監督だが、グラウンドで選手を指導する姿は非常に若々しくその年齢を感じさせない。「指導者は自分で実技を見せられないといけないと思ってやっています」と語るように、リードのとり方やスタートなども自ら体を動かして指導する姿が印象的だった。そして自ら見せるだけでなく、数字で示すのも尾崎流。
ベンチにはリードの目安となる距離を示したメモが貼られており、サークルスプリントの際も「円周は2πr(パイアール)だから1周で31.4mやぞ。意外に長いやろ」と実際に走った距離も伝えていた。
毎年この時期にはグラウンドを外部から講師を招いて行うセミナーの会場として提供するなど、高校球界全体のレベルアップに対する意識も強い。「今年のチームは全然(力がない)ですよ」と話していたが、春にはまたレベルアップしたチームになっていることは間違いないだろう。そう感じさせる練習風景だった。(取材・文:西尾典文)
いなべ総合の過去5年間の三重県大会の成績(参考)
12年 春ベスト8 夏準優勝 秋準優勝
13年 春優勝 夏2回戦 秋ベスト4(3位)
14年 春準優勝 夏ベスト4 秋優勝
15年 春優勝 夏準優勝 秋ベスト4(3位)
16年 春優勝 夏優勝 秋ベスト8
※13年夏の2回戦敗退も優勝した三重高校に1-2と惜敗。