トレーニング

漠然とやってない? ウォームアップを行う3つの目的と順番

2019.10.9

野球の練習や試合の前には必ずウォームアップを行いますが、なぜウォームアップが必要なのか知っていますか? いきなり野球の動きを始めてしまうと筋肉や関節の動きが十分に引き出せず、ケガをしてしまうことにもつながるからです。ウォームアップを行う3つの目的と順番を確認してみましょう。


(1)体温・筋温を上昇させ、柔軟性を高める(立位でのストレッチ)

体を動かしてしばらくすると体温や筋温が上昇し、体の柔軟性が高まります。朝起きたての体はカチコチでぎこちない動作になりがちですが、さまざまな動きを行っていると筋肉の柔軟性が高まり、関節が動きやすくなります。まずはじめに立った状態で軽めのストレッチを行い、少しずつ運動への準備を行いましょう。このときは座って落ち着いた状態よりも立った状態のほうが、これから野球をするという心理的な準備にもなります。

(2)血流を良くして運動に適した体を準備する(ジョギング、ダイナミックストレッチ)

筋肉や関節が動きやすくなったところで、軽めにジョギングを行います。ジョギングを始めると体が熱くなり、しばらくすると呼吸の数や量、心拍数などが上がって、酸素を体により多く取り込むようになります。十分に酸素を取り込めるような体になるまではある程度の時間差が生じるため、前もって体を動かしておくと良いでしょう。その後、キャリオカやバウンディングなど全身を大きく使って動くダイナミックストレッチを行います。

(3)神経の働きを良くする(ダッシュ)

部分的(筋肉や関節など)、全体的(心肺機能など)な準備が整ってきたところで、今度は脳の反応やより力強い動作ができるようにドリルやダッシュなどを行います。目からの合図によって素早くスタートを切る動作や、短い距離を瞬時に駆け抜けるダッシュなどを繰り返し、脳の中枢神経を刺激して運動時の反応を高めるようにします。また体温・筋温が上がると神経の伝達スピードが高まるため、脳からの運動命令を素早く筋肉へ伝えて動かすことができるようになります。

このように見ていくと、ウォームアップは単に体を温めるためて筋肉や関節を動かしやすくするだけではなく、体を動かすための脳にも作用し神経伝達を促すことにもつながります。また心の準備としてもウォームアップは欠かせないものです。順番としてはまず筋肉や関節など体の部分的なところからはじめて、全身の血流をよくし、さらに脳の働きへと続きます。後半ではウォームアップを左右する要因や実際にかける時間などについてお話をします。

著者プロフィール

アスレティックトレーナー/西村典子(にしむらのりこ) 日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS、 NSCA-CPT。東海大学スポーツ教育センター所属。高校、大学など学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。

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