自分がまず楽しく、面白く感じるやり方をやる
そう考えるようになったのは福島監督自身の身内の出来事が大きかったという。
「昨年なんですけど父親が亡くなったんですね。ガンだったのでそのだいぶ前から長くはないというのは聞かされていたんですけど。それで父親と話していたら、人間いつかは死ぬから、それが早いか遅いかだけだからって言っていて、自分らしく亡くなったんです。それを見ていたら自分もどうせ死ぬんだし、監督だって教員だっていつから辞めるんだし、だったら自分らしくやった方がいいなって思ったんです。よくよく考えたら、今までのやり方で監督やっていても自分が楽しくないなって。朝早くから夜遅くまで練習して、休みもなくて、負けたら反省して。あれ? 全然面白くないなって(笑)。だったら自分がまず楽しく、面白く感じるやり方をやろうと。そう考えるようになったのが大きいですかね」
取材当日、福島監督は会議があるということで練習には途中から合流していたが、選手たちと接する姿を見ていても常に自然体で、コーチ時代に「目が血走っていた」と話すような雰囲気は全く見られなかった。ただ、だからといって決して雰囲気が緩いわけではなく、選手それぞれが課題を持って取り組んでいるように見えた。よく言う“やらされる”練習ではなく、選手自らが“やる”練習になっていると言えるだろう。もちろん自然とそうなっていったわけではなく、福島監督の意識や声掛けによって変わっていった部分も大きいはずだ。
「自分らしくやろうと思って大きく変わったのは選手をよく見るようになったことですね。前は選手の反応を見ずにこちらが伝えたいことだけを伝えていたのですけど、それだと『はい!はい!』と言うだけで伝わってないじゃないですか。でも表情とか態度を見ていたら色々分かることがあります。だからどのタイミングでどんなことを言うか、こっちが言った後にどんな反応をするか、そういうことを考えるようになりました。そうした方がこちらも面白いんですよね」
コーチングの基本と言われるものはいくつかあるが、そのうちの重要な一つが相手をよく観察することである。この日も話をしながらも、選手の様子をよく見ていることは伝わってきた。そういう指導法によって効果が上がってきた面も大きいのではないだろうか。
後編はさらにチーム作りで重要視していることや、福島監督の話す日大豊山らしさについてお届けします。(取材:西尾典文/写真:編集部)
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