学校・チーム

愛知の公立伝統校 大府の遠征に密着(2) -バス移動編-

2015.12.16

 遠征の質は高めることができる。遠征の質向上はそのままチームのレベルアップに繋がる。そう感じたのは愛知県立大府高等学校の遠征だった。
「私学四強」を筆頭とする、激戦区愛知で7度の甲子園出場を誇る大府。しかし、2008年夏(第90回)出場を最後にここ数年は県ベスト4の壁にぶつかっている。そんな大府がはじめた「遠征の改革」とは一体何なのか。そして、その背景とは――。


●実はやることが多いバス移動

 移動はただ乗車しているだけ、眠っている、音楽を聴いているというようではナンセンス。移動時間によって変化はあるが基本のかたちはある。


(座席)
 まずは座席の使い方だが、基本的には自由。ただ、マイクロバスの場合は助手席にマネージャー、観光バスの場合は(監督が最前で)監督の後ろにマネージャーが座る。これは指示をすぐに聞いたり伝達をできたりするためだ。

 また、どうしても乗り物酔いをしてしまう選手はいる。そういった選手は出入り口に近い席、マネージャーの近く、(席に余裕があれば)1人で2人分を使用したりするという配慮をあらかじめしておく。


(過ごし方・移動日)
 今回のように前泊での移動日は車内で勉強をする。適宜休息をとりつつ、静かに黙々と。勉強をする習慣づけをする必要もあるのだ。


(過ごし方・試合前後)
 試合前は対戦校と試合会場等についての報告をおこなう。公式戦であればより精査されたデータになるが、練習試合であれば、どういった学校なのか(校風等)、野球部の歴史、近年の成績(チーム、個人等)が報告される。そこから、試合展開の見立てや予想される相手のプレースタイル、留意点が確認される。


 試合開始前、特に第2試合以降での登場となると簡単なキャッチボールとシートノックの時間しかフィールドに入っての確認はできないため、相手のスタイルや球場(広さや芝、風など)について確認しておくことは、球場入りしてからの時間を無駄なく使うこと、時間をかけて確認すべきことは何か……と、繋がっていくのである。
(例:外野天然芝、走塁自慢のチームとわかっている場合、外野手はゴロノックを多く受けて打球のスピードや減速を確認。ポジショニングの参考にする)

 また、試合直前や試合中に慌てることや後手を踏むこともなくなる。たとえば、数日前から当日の天候変化を事前に調べ、どのようなグラウンドコンディションにも対応できるようにすれば、必要となる荷物が不要な荷物と一緒にベンチ裏やスタンドへ行ってしまうことはなくなる。(例:「昨日雨が多く降り、グラウンドが緩い可能性があるため、ベンチに雑巾や土落とし、ロジンも多めに用意しましょう」)

 情報共有・報告を習慣づけることで一人ひとりの視野が広がり、他人に興味を持つようにもなる。ここで会話が生まれることで、コミュニケーションの希薄化も防ぐことが可能だ。情報共有が終わったところで、一人ずつ意気込みや自分の役割を口にしていく。仲間に宣言するというのは重要で、これによりボーっとしているだけで遠征が終わってしまうという選手はいなくなる。意識レベルの差を埋めていくのも普通の公立校には必要なのである。

 試合後は車内でミーティングを始める。「鉄は熱いうちに打て」というのもあるが、1回から9回まですべて確認しながらのミーティングのため、内容は濃いが時間もそれだけかかってしまう。自主練習の時間をとるためにもスタートを早くしなければならないのである。


愛知の公立伝統校 大府の遠征に密着(1) -食事編-
愛知の公立伝統校 大府の遠征に密着(3) -ねらい編-



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