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愛知の公立伝統校 大府の遠征に密着(3) -ねらい編-

2015.12.18

 遠征の質は高めることができる。遠征の質向上はそのままチームのレベルアップに繋がる。そう感じたのは愛知県立大府高等学校の遠征だった。
「私学四強」を筆頭とする、激戦区愛知で7度の甲子園出場を誇る大府。しかし、2008年夏(第90回)出場を最後にここ数年は県ベスト4の壁にぶつかっている。そんな大府がはじめた「遠征の改革」とは一体何なのか。そして、その背景とは――。


●普通の公立校はチーム力で戦わなければならない

 なぜ、このような取り組みをするのか。

 大府は春4回・夏3回の甲子園出場、槙原寛己・赤星憲広・小山雄輝といったプロ野球選手も排出し「公立の雄」と称されることが多い。今となっては伝統校として愛知では認識されているが、飛び抜けて良い選手が入学してくるわけではなく、硬式人気が高まっている愛知でチームの6~7割は地元・中学軟式野球部出身者。さらにその中で県大会レベルの経験者を絞ると一気に数は減ってしまう。硬式チーム出身者も控え選手だった者が大半だ。

 先述したように近年は最高で県ベスト8と「低迷」していると言わざるを得ないが、それは入学する選手のレベルが問題というわけではない。事実、年々入学者の技量は落ちてきているが、08年の甲子園メンバーはシングルナンバー9人のうち6人が軟式野球出身、投手登録4人のうち3人が中学軟式野球部出身と、今と変わりない。

 野田監督は、精鋭集団・寮生活・野球第一といったシステムを採用している強豪チームに勝つために何をすべきか考えた。ただ、勝つためだけの野球にはしたくないという思いがあり、あくまでも教育の一環という軸はぶれなかった。そのとき、まず浮かんだのは恩師・馬場茂先生(現・大府教頭、野球部長)の「伸びる選手の8ヶ条」だった。

1.素直で謙虚である
2.何事にも言い訳しない辛抱強さがある
3.強くなりたいという覇気、向上心が旺盛である
4.地味なことでもやり続ける根気強さがある
5.研究・工夫を怠らない
6.感性が豊かである
7.野球をやらせていただくという感謝の気持ちがある
8.基本的な生活習慣がしっかりしている  

 これを大府のストロングポイントに、いわゆる「人間力野球」で戦おう、ここからスタートにしようと考えたのである。その一つが遠征の改革にもつながっている。ミーティング・食事・清掃など、すべて伸びる選手の8ヶ条に照らし合わせることができるはずだ。

 まだまだ、足りない部分もあり発展途上ではあるが、この意識や取り組みの成果は確実に出てきている。高校のみならず、中学野球指導者、少年野球指導者の方々も参考にしてみてはいかがだろうか。

愛知の公立伝統校 大府の遠征に密着(1) -食事編-
愛知の公立伝統校 大府の遠征に密着(2) -バス移動編-



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