企画

山本昌氏と科学者・永見氏が投球対談「投げ方に合った球種を見つけ、磨こう」

2020.10.15

【テーマ2】ボールがシュート回転する際の調整方法


日大藤沢高の臨時コーチも務める山本昌氏

山本昌 
実際のピッチングでは、ボールがシュート回転しているかどうかは調子を探る基準になります。自分は左投げですが、右バッターのアウトコースは若干シュートしてもいいけれども、インコースはシュートさせてはだめだと意識して調整していました。(アウトコースに比べ、体を捻って投げる必要のある)インコースへのボールがシュート回転しないときは、アウトコースもシュート回転しないものですが、調子が悪いときはアウトコースにはいいボールが決まるけれども、インコースはシュートしてしまうことがよくありました。

永見 投げるボールがシュート回転してしまうときは、どんな調整をしていましたか?

山本昌 肩が前に出ると手首が立った状態を維持し、ボールに縦回転を加えるのが難しくなりボールが外に逃げていく、シュート回転するという考え方をしていたので、肩が前に出ないように意識しながらキャッチボールをして、シュート回転を修正していました。僕はスリークォーターでしたがキャッチボールではオーバースローで真上から腕を振り下ろしていましたね。それも、きれいな縦回転を意識してのことでした。ちなみに、ピッチャーのボールがシュート回転しているときに「体の開きが早い」という指摘が入ることがありますが、自分はあまりしっくりきません。選手がそう感じるのであれば尊重すべきだと思うのですが、外から見てわずかな動きの変化を感じ取ることはできないように思います。

永見 実際にマウンドに立ったときは、そのキャッチボールとは違う投げ方をするわけですよね?

山本昌 そうですね。試合では、前に踏み込んでできるだけ体を前に移動させながら腕を大きく振り、遠心力を使って投げようと思っていました。それを心がけると、自然とキャッチボールよりも肘が下がってくる感じです。また、「前後」の話でいうと、変化球はストレートよりも前で離す感覚で投げていました。カーブがイメージしやすいと思います。強くボールを弾いてボールを回転させ、ストレートよりも上に向かっていく軌道で飛び出すカーブというボールをストライクゾーンに入れるには、少し前で、つまりより低い位置で離す必要があると考えていました。でも科学的には、カーブが「上に向かって飛び出す」イメージは錯覚なんですかね?

永見 いえ、角度にして5度程度ですが、カーブは上に向かって飛び出しています。ストレートは体に近いところで離せば上に、前で離せば下にいくものですが、それとは少しイメージが違う球種もありますね。そのほかに調子を見極めるために大切にしていた感覚はありますか?

山本昌 ボールが指にかかった感覚。中指と人差し指のどちらにかかっているか、でしょうか。チェンジアップ、スクリューボールは中指。ストレートは両指。カーブやスライダーは人指し指。ただ人差し指にかかるボールは肘への負担が大きいと感じていたので、練習ではできるだけ投げたくないと思っていました。スライダーは試合前に数球投げる程度にして、カーブも一生懸命中指にかかるようにしていました。

永見 ハイスピードカメラなどで観察すると、ボールが指から離れる瞬間のかたちで回転軸は大きく変わります。シュートやツーシームなどは特に顕著で、ボールに求める回転をさせるうえで、重要な感覚だと思います。


永見氏は投手のパフォーマンスと投球動作の関係などを中心に研究活動を行う


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