企画

山本昌氏と科学者・永見氏が投球対談「投げ方に合った球種を見つけ、磨こう」

2020.10.15

レーダーやビデオカメラを利用し、投手の投球を物理現象としてとらえデータ化する技術の普及が進んでいる。取得された〈トラッキングデータ〉を使った研究は投球理論をバージョンアップさせ、より科学的な議論を可能にしつつある。今回は現役時代から科学的な投球を志向し試行錯誤を続けてきたという元中日ドラゴンズ投手・山本昌氏と、北里大学で「野球投手が投じるさまざまな球種の運動学的特徴」などのテーマで研究を行う永見智行氏を招き、経験と理論、双方からの見解を述べ合っていただく対談を実施した。Timely! WEBでは対談中の話題のなかから高校球児の技術向上のヒントになりそうなテーマをピックアップしお届けする。

山本 昌(やまもと・まさ)
1965年生まれ。神奈川県出身。日大藤沢高から83年ドラフト5位で中日に入団。実働29年で581試合登板、219勝165敗、防御率3.45の成績を残した。最多勝(3回)、最優秀防御率、最多奪三振、沢村賞などタイトル多数。現在は日大藤沢高の特別臨時コーチも務める。

永見 智行(ながみ・ともゆき)
1985年生まれ。早稲田大野球部でトレーナーを務める。早稲田大学スポーツ科学研究科で修士、博士課程を修了。主な研究テーマは「野球投手が投じるさまざまな球種の運動学的特徴」。プロ野球球団との共同研究も行っている。


【テーマ1】スライダーの投げ過ぎはストレートの球速を下げることも

※本対談の完全版はベースボール・マガジン社「ベースボール・クリニック」2020年11月号(https://www.amazon.co.jp/dp/B08KGFD19C)(10月17日発売)に掲載されます。

永見 
ピッチャーが投げるボールの回転数や回転軸などに着目し研究してきて思うのは、ピッチャーは投げ方により、投げられるであろう回転、軌道のボールがある程度決まってくるということ。ですので、自分の投げ方に合った球種を選び習得しようとする姿勢が大切だと思っています。自分に合っていない球種を新たに覚えた結果、それまで強みだった球種の質が落ちるというようなこともありえます。

山本昌 僕もそう思います。例を挙げるならスライダーですね。スライダーは比較的簡単に投げられる変化球で、ストライクも取りやすい。でも、投げすぎるとリリース時に手首が横に傾き立たなくなる。それがストレートに影響を与えると感じていました。

永見 ボールを曲げようとして手首が立たなくなると、ストレートはどう変わるのですか?

山本昌 スピードが落ちる。僕は5キロくらい落ちたことがありました。腕の振りというのは変化球に寄っていくもの。スライダーを投げすぎてストレートの速度が落ち、プロ野球を辞めていったピッチャーは数えきれないほど見てきました。僕の場合はスクリューボール(シンカー)を覚えようとしたことがきっかけで脱せました。スクリューボールは手首を立てて投げないとうまく変化しない球種なので、そればかり練習していたらストレートの速度が戻ってきたんですよ。それで、速度のあるストレートを投げるには、手首を立てることが重要だと改めて知ることができたんです。


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