野球はピッチングやバッティングなど反復練習をすることでフォームを確立し、再現性を持たせることがパフォーマンスに影響すると考えられます。そのため、いわゆる「投げこみ」「振りこみ」「走りこみ」といった練習量を重んじる傾向があります。特に今春から夏にかけては練習が十分にできなかったチームも多く、練習不足を短期間で取り戻そうとすると、自分の持つ体力レベルを超えてケガを誘発してしまうリスクが高まります。
体力レベルにあった練習を
もともと野球はオーバーワーク(練習過多)、オーバーユース(使いすぎ)による慢性的なスポーツ障害の多いスポーツです。技術練習を積み重ねる前にその競技に必要な体力要素が備わっていないと、体の弱い部分そのものに負担がかかったり、弱い部分をかばって他の部位を痛めてしまったりといったことが起こります。例えば投げこみを行うと練習後や翌日以降に肩が痛くなったり、肘が痛くなったりした経験があると思いますが、これは典型的なオーバーユースの状態であり、痛みを我慢してさらに練習を続けてしまうと野球肩、野球肘と言われるようなスポーツ障害を引き起こしてしまいます。
スポーツ障害を予防するためには、
●その練習が「体力レベルにあったものかどうか」「オーバーワークになっていないかどうか」を確認する
●練習後に使った部位へのアイシングやストレッチなど適切な対応を行う
●痛みスケールを記録しておき、痛みがどんどん強くなる時はその部位に負担のかからない練習に切り替えるか、もしくは練習そのものを中断する
●反復練習の内容、量、強度を再考する
といったことを確認しましょう。
痛みスケール(スケールとは物差しのこと)とは野球ノートや日記などに痛みのレベルを記録しておくことです。10段階もしくは5段階で痛みのない段階を0、痛みが一番強い段階を10(もしくは5)としておき、その日の痛みを数値化することです。痛みというのは人によって感じ方が違うものなので、自分なりの基準で記録しておくと他の人が見てもわかりやすく、医療機関を受診するときにも参考資料となるでしょう。
特に成長期にあるジュニア選手は体の成長を妨げるようなオーバーワークを避ける必要があります。バットの振りこみによる腰椎分離症などはジュニア選手に多く見られる典型的なスポーツ障害の一つです。このようなケガを未然に防ぐためにもオーバーワーク、オーバーユースには注意し、体力レベルにあった練習を行うようにしましょう。(西村典子)
オーバーワークやオーバーユースは慢性的なスポーツ障害のリスクを高める
著者プロフィール
日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS、 NSCA-CPT。東海大学スポーツ教育センター所属。高校、大学など学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。
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