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球界初の兄妹プロ野球選手が挑む、狙うは「首位打者」

2015.3.11
東京ヤクルトスワローズ・川端慎吾選手と女子プロ野球、埼玉アストライアに所属する妹・川端友紀選手は、球界初の兄妹プロ野球選手として、それぞれの舞台で活躍している。ともにSSKとアドバイザリースタッフ契約を結び、1月中旬に合同自主トレーニングを行った。兄は妹のよき手本であり、妹は常に兄を目標とし続ける。強い絆で結ばれた2人が、野球について語り合った。


昨シーズン、明暗分かれた兄妹

 2014年シーズン、慎吾選手は自己最多となる142試合に出場し、自身初の規定打席に到達しての打率3割超え(.305)をマーク。「目標はけがをしないことだったので、1年間試合に出られたことはよかった。でも、チームは2年連続最下位。チーム成績を上げられなかったのは悔しい」と、2001年以来遠ざかっているチームの優勝のため、安打も一発もある攻撃的な二番打者を目指す。

 一方の友紀選手は、2013年シーズンに首位打者(打率.431)、最多打点(34)、最高出塁率(.537)の3冠に加え、MVPにあたる角谷賞を獲得し、年間女王に貢献。しかし、2014年シーズンは打率.275と低迷。チームも女王決定戦で京都に敗れた。「技術面や精神面だけでなく、コンディションも万全ではなかった。でも、結果が全て。悔しい思いをした分、今シーズンは見返したい」と、2年ぶりの年間女王奪取に向けて強い思いで始動する。


球界初、兄妹プロ野球選手の自覚

 2015年1月中旬、愛媛・松山市で行った合同自主トレでは、ヤクルトの選手ら11名が集まった中、女子選手としては友紀選手一人が参加した。一人で参加することには不安があったと思うが、「志願して今回初めて参加した妹に本気を感じました。昨年は相当悔しかったんだろうなと思います。妹は何事も一生懸命で、練習でも手を抜かない。負けず嫌いなところは僕と似ていると思います。自主トレでやったことをしっかりやって、首位打者をとって活躍する姿を見たいですね」と、プロ野球選手として自覚が出てきた妹に対する思いを語った。

 「兄のことは全てにおいて尊敬しています。バッティングフォームも兄に似ていると言われます。自主トレでは、緩いボールをしっかり打ち返すように指導してくれた。気づいたことをすぐに指摘してくれ、ありがたいですね」と語る友紀選手。シャトルランでは男子顔負けの持久力を見せるなど、今シーズンにかける強い思いがトレーニングに取り組む姿勢を変えた。さらに、「子供の頃は人前で喋るのは苦手だったけど、苦手意識はなくなりましたね」と、堂々と応える姿勢にプロ野球選手としての自信と成長が感じられ、今シーズンの活躍を期待させてくれる。


野球を始めるきっかけとなった父親の存在

 そんな兄妹が野球をするきっかけを語るときに欠かせないのが父親の存在である。自身も軟式野球の選手として長年活躍し、現在は地元で少年硬式野球の監督を務めている。慎吾選手にとっては父親という役割以上の存在、野球においての「師匠」だという。

 「今も元気に監督をしている父が、選手として活躍しているのを見て野球をしたいと思いました。小さい頃からずっと一緒に野球をやってきて、基礎をたたき込まれたという点で感謝しています。今でも、ちょっと状態が良くないときにはアドバイスをもらったりしています。自分の悪いところとか、調子が悪くなったらどうなるかとか、自分のプレーを全部わかってくれているので」。今でも年末年始は実家の大阪へ帰省し、野球談議に花を咲かせ、家族との絆を深めている。

 「8歳で兄と同じ野球チームに入って、初めて野球を教えてもらったのが父です」と、語る友紀選手。「グラウンドでは厳しいですけど、家では普通の良いお父さん。そんなに怒られた記憶はないですね」と、野球一家に生まれ、野球を始めることは必然の流れであり、兄を含む周りの環境に恵まれたことも今の友紀選手の土台を作っている。


SSKとのアドバイザリースタッフ契約

 兄妹は今年、二人揃ってSSKとアドバイザリースタッフ契約を結んだ。野球をする上で大切なことは、「何より道具を大切にすること」と語る慎吾選手。バットは7年前から同じスペックのもの(85cm、910g)を使っている。「追い込まれてからも粘れるように、重心がグリップ寄りになっていて扱いやすいんです。もうこのバットから離れられないですね」と、SSKを選ぶ理由を語ってくれた。

 また、女子プロ野球選手初のアドバイザリースタッフ契約を結んだ友紀選手。「女子野球では金属バットを使っていて、いろいろなバットを試したのですが、一番振り抜きやすいバットを用意してくれたことが今回契約した大きなポイントになりました」と、国内リーグ戦から世界大会まで一年を共に戦う相棒として大きな信頼を寄せてくれた。「女子プロ野球を盛り上げるため、一緒になって戦っていくと決めました」と、契約したことに満足するだけではなく、しっかり成績で応えると決意を述べた。


兄妹同時「首位打者」に挑む

 今シーズンプロ10年目の節目を迎える慎吾選手は、個人の目標として「全試合に出場し、首位打者のタイトルを獲得すること。そしてチームの順位を一つでも上げていくこと」と語った。昨年結婚し、新たな家族のサポートを受け、野球に集中できる環境で今シーズンに挑む。

 友紀選手は、「埼玉アストライアとして年間女王と、個人としては首位打者のタイトルを奪回したい」と今シーズンの目標を掲げる。「女子プロ野球が発足して5年が経ち、高校の女子硬式野球部も5校から18校まで増えました。女子選手にも、夢の一つとして、ぜひプロ野球選手を目指して頑張ってほしいですね」と語る友紀選手は、女子プロ野球選手のパイオニアとして自覚を背負い今シーズンの戦いに挑む。

 対談終わりに、兄妹はキャッチボールを行った。ボールを通じて会話し合うかのように。野球で味わった悔しさは、野球で晴らすしかない。強い絆を胸に野球界初の「兄妹同時首位打者」を掲げた川端兄妹の今シーズンから目が離せない――。

(取材協力:サンケイスポーツ)

川端慎吾(かわばた・しんご) 1987(昭和62)年10月16日生まれ、27歳。大阪府出身。2006年高校生ドラフト3巡目で東京ヤクルトスワローズ入団。11年に遊撃のレギュラーに定着し、シーズン中盤からクリーンアップを任された。13年から主に三塁手で出場。通算成績は623試合に出場、打率.291、25本塁打、233打点。185cm、86kg。右投げ左打ち。背番号5。
川端友紀(かわばた・ゆき) 1989(平成元)年5月12生まれ、25歳。大阪府出身。小学校時代に兄・慎吾とともに貝塚リトルで野球を始める。高校、社会人とソフトボール部に所属。2010年から女子野球の京都や日本代表で活躍。13年からアストライア所属。同年、首位打者と打点王を獲得、MVPに輝いた。リーグ戦通算成績は210試合に出場、打率.380、119打点。170cm70kg。右投げ左打ち。背番号23。


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