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【大冠】大阪桐蔭追い詰めた!「公立の雄」が築く圧倒的な打撃力(前篇)

2017.11.1

打撃練習に取り組む大冠高校の選手

「公立の雄」が誇る圧倒的な打撃力

今年の選抜で頂点に立った大阪桐蔭。夏の大阪大会も準決勝でライバル・履正社に勝利し2季連続、夏に限れば3年ぶりの甲子園出場に王手をかけた。

反対側の山を勝ち上がってきたのは公立の雄・大冠。激戦区大阪において公立高校が決勝に進出したことが19年ぶりという快挙だった。そんな背景もあり組み合わせが決まった時点で大阪桐蔭有利の声が大半を占めていた。それでも超高校級の選手を多数擁する絶対的王者を前に、大冠ナインの気迫は全く怯んでいなかった。

2回に先制を許すが3回に犠打を挟んでの5連打で4点を奪い逆転に成功。その後リードを奪われ、6点差を追う展開で9回を迎えたが、打線が奮起し4点を返す。さらに2死1、2塁と一発が出れば同点という場面を作った。この驚異の粘りに大阪シティ信用金庫スタジアムの雰囲気は大阪桐蔭スタンドを除いて大冠一色。おそらく百戦錬磨の大阪桐蔭にとっても経験したことのないアウェーだったに違いない。

惜しくも甲子園出場はならなかったが、大阪桐蔭をあと一歩のところまで追い詰めた底力、8試合で63得点を挙げた圧倒的な打撃力はどのようにして培われたのだろうか。

平日1000回、休日2000回。

これがスイング量のノルマである。技術練習よりも体力強化に重きが置かれる冬場はさらに増えて3000回。しかも11月末、最後の練習試合を終えると通常のバットは全て倉庫の奥に仕舞う。オフシーズンに使うのは1kg、1.2kg、1.5kgのマスコットバットと特別に作ってもらったという1.8kgの重量感たっぷりのバットのみ。この夏、大冠が勝ち進む度に3000回というスイング量が話題になったが、それだけでは一言足りない。正確には「重いバットで3000回」だ。

大冠高校野球部の練習に用いられる様々な種類のバット

大冠高校の12種類の素振り

《内容》

【1】重心移動(体重移動とねじり)
【2】割れを作る
【3】バスター
【4】早振り
【5】ステップ(軸足にしっかり乗せる)
【6】軸足をズラす(前の壁をしっかり作る)
【7】肩からスイング(インサイドアウトの軌道)
【8】手を離して2回、閉じて1回(手を離すことで返しを速くする感覚を養う)
【9】持ち手の上下入れ替え(前の脇が開かないように)
【10】片手スイング
【11】8の字スイング(インサイドアウトの軌道と肘、手首の柔い使い方)
【12】掬い上げスイング(低めのボールへの対応力)


打撃型のチーム作りを目指すようになったのは今の大学4年生の選手が高校球児だった頃。振れる選手達が揃っていた代で食トレにも力を入れ始め体は目に見えて大きくなっていった。実はそれまでは守備練習が6〜7割を占めていた。投手を中心に守備を鍛えて最少失点で凌ぎ、少ないチャンスをモノにする。公立が勝つために最も有効で最も現実的と思われていた戦略だが、どんなに守りを鍛えても強豪相手にはどうしても5失点以上する試合は出てくる。しかも学校数の多い大阪は8回勝たないと優勝出来ない激戦区。守備力で3回戦、4回戦まで進んでもその先の戦いで勝つためには7、8点取れるチームを作らなければならない。東山宏司監督が感じていた近年の高校野球の流れと選手の特徴が合わさり、チーム方針は大きく舵を切った。

選手にトスを上げる東山宏司監督
選手にトスを上げる東山宏司監督


(取材・撮影:小中翔太)

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