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【大冠】大阪桐蔭追い詰めた!「公立の雄」が築く圧倒的な打撃力(後篇)

2017.11.2

暗くなってもバットを振り続ける大冠高校野球部の部員たち

公立の雄。大冠はそう形容されることが多い。ただ環境面で決して恵まれているわけではない。グラウンドは大阪の公立校の運命と言うべきか他クラブと共有(取材日の練習はフリー打撃からスタートしたが、この日はサッカー部の公式戦が平日に組み込まれたためで、かなり貴重な機会だった)

テスト週間の練習は1時間だけ。同じ大阪府下の公立の有力校でも桜宮や汎愛と違い体育科が無く、部員の9割は軟式出身者。本当に普通の高校と何一つ変わらない。そのためグラウンドを広く使った打撃練習を行うべく、朝練は毎日6時から始まる。公式戦の日でも試合会場に向かうのは学校で打撃練習を終えてから。朝9時開始の第1試合の日は、5時からグラウンドに打球音を響かせる。

練習開始前に部訓の唱和を行う大冠高校野球部の選手とマネージャー

打撃練習はシーズン中でも木製バットを使い、金属バットを使うのは実戦を想定したケース打撃を行う時と12月、1月の真冬だけ。練習試合ではAチームが試合を行なっている最中に控え選手は外野の向こうで試合開始から終了までひたすらバットを振る。監督の目の届く範囲だから誰も手を抜けない。以前は1日で最高2000スイングだったが今は3000スイングに。ドアスイングなどの悪癖を矯正するため取り入れた7種類の素振りは12種類に増えた。

▼素振りとトレーニングを組み合わせたサーキット

それだけのスイング量と1年生の頃から試合経験を積んでいた選手が揃ったのが旧チームだ。しかも主力選手達は朝6時の全体練習が始まる前からグラウンドに姿を現し、ティーバッテイングや素振りを欠かさず行っていた。それは冬場で自主練の日も、公式戦翌日のオフの日も変わることはなかった。ショートを守った守備の要、寺地広翔も毎日暗い内からバットを振ることで打撃面でも成長。3年春を迎える頃には柵越えの打球も飛ばすようになり、どこからでも長打の打てる打線が完成した。努力すれば結果は出る、振れば飛距離は出る。先輩達が背中と結果で示してくれたものはチームにとっての財産だ。

バッティング練習に取り組む大冠高校野球部員たち

夏に大きな足跡を残し例年以上の注目を集めた新チームだったが、秋は初戦で強豪私学の一角・大商大堺と対戦し0-1で敗戦。完封負けを喫したが、その中身は打線が沈黙したのではなく互いに鋭い打球を何度も飛ばし、それをファインプレーで何度も阻む非常に引き締まった好ゲームだった。

打撃中心のチームだが守備を疎かにしているわけではない。守備練習も毎日行い、ノックには必ず投手も入る。1-6-3の併殺の時にはショートがベースカバーに入るタイミングをわざと遅らせることもある。準備の大切さを説く東山監督は「夏がメインのスポーツは冬にしっかりやらなあかん」と来年の夏のために冬の指導に力を込める。新チームの守備力は旧チームと遜色なく、打撃面でも振れる選手は複数いる。

ただ、試合経験の少なさでチャンスを作りながらあと1本が出なかった。「振り負けてるんじゃなくて打ち損じ。ボールの勢いに負けてるとか変化球のキレにやられてるんじゃなくて、ミスショットですよね」確率を上げるためティーバッテイングでは打ちやすいところに一定にトスを上げるのではなく高低をつけ、バドミントンのシャトル打ちも様々なコースに投げるなど工夫をこらす。

部員に直接打撃指導を行う東山宏司監督

冬の課題は投手陣の底上げと共に打撃陣ではメンバーの固定だ。夏の決勝まで進んだため新チームのスタートは遅れ、調子次第でメンバーがコロコロ変わっていた。大商大堺戦でもスタメン9人中4人が2桁背番号。4番を任された三浦夏輝も背番号は12で、直前のB戦の練習試合で3打席連続本塁打を放った調子の良さを買っての抜擢だった。

旧チームは下級生の頃から出ていたメンバーも多く1番から9番までほぼ固定。各自が自分の役割を理解し、文字通りの打線となっていた。「春のスタートを切る時には1番から主力の67番ぐらいまでは固定出来て、左右で代打の切り札を見つけて」とするのが東山監督の狙い。キャプテンを務める柏村陵は「3000回振って夏勝てなかったので、それ以上に振りたいです」と冬練に臨む。

旧チームはオフ開け最初の練習試合でなんと6本塁打。球春到来と共にロケットスケートを切り、夏の大躍進につなげた。この秋、大阪から近畿大会に出場したのは大阪桐蔭、履正社の2強と全国クラスの好左腕を擁する近大附。そこに大冠の名前は無かったが、長い冬を経て再び猛打で旋風を巻き起こす。(取材・撮影:小中翔太)

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