やはり、主となるのは炭水化物。経済的なことも考えて、白米を食べている学校が多い。
激戦区・神奈川で、大きな体の選手が多いのが横浜隼人だ。とにかく食べる。今年のエース・山口直也投手は最速140キロを誇る右の本格派。185センチ80キロ。「身長―100<体重」をクリアしていないが、昨年冬だけで8キロもの体重増に成功した。その秘密を聞くと「弁当箱3つとおにぎり20個を、学校に持って行っていました」とサラリ。授業の休み時間に食べ、練習の合間にも食べ、空腹の時間をなるべく減らすようにしているという。何と、間食(朝昼晩の三食以外の食事)だけで3合のお米を食べているそうだ。さすがに、これだけ食べれば、体は変わる。
高校球児向けのフリーマガジン『Timely!』の取材で足を運んだ日立一高(茨城)も、食事に力を入れる学校のひとつ。
感心したのは、選手ひとりひとりのお米の量が一覧表になってまとめられていることだった。もう少しで「身長―100<体重」をクリアできる
A選手の場合は、このようになっていた。
・1日に食べるご飯の量 2181グラム
朝食=436.2グラム
昼食=872.4グラム
夕食=872.4グラム
間食=218.1グラム
ただやみくもに食べるのではなく、どのタイミングでどれだけ食べればいいのかを常に意識している。
タイミングといえば……、山梨学院大付属を率いる吉田洸二監督も体作りに定評のある指導者だ。前任の清峰(長崎)でセンバツを制するなど一時代を築いた。
3度出場した夏の甲子園において、基準値をクリアした人数は次のとおりだ。1校の数字としては、出場校全体の平均値よりも高い。
2005年夏 7名/18名
2008年夏 7名/18名
2010年夏 10名/18名
吉田監督がこだわるのは、食事をとるタイミングである。激しいトレーニングをした直後に牛乳や小魚などをとり、練習終了後は「ゴールデンタイム」といわれる30分以内におにぎりを食べる。現在の山梨学院大付はグラウンドの横に寮があるため、すぐに夕飯を食べるようにしている。
こんなエピソードもある。
大会では試合後すぐに取材が始まるが、選手は取材前に疲労回復のために100%のオレンジジュースを飲む。このタイミングで飲まなければ、取材を受けている最中に30分が経過してしまうことがあるためだ。
このような高校野球の流れは、中学野球にも大きな影響を与えている。
大阪の強豪軟式クラブ・門真ビックドリームスは1日練習のときに、「タッパ飯」(約2リットルのタッパにご飯をしきつめる)を2つ持参。朝と昼に食べるようにしているのだ。中学時代にこれだけ食べていることもあって、「高校で食べられずに苦労する選手はいません」と橋口和博監督。食べることも、高校野球のための準備といえるだろう。