企画

選抜優勝投手の系譜“東浜巨”

2016.2.2
~なにが起こるかわからないのが甲子園~

2008年、第80回選抜高校野球大会で優勝投手となったのは沖縄尚学のエース東浜巨(現・福岡ソフトバンクホークス)である。
当時の東浜投手は、最速147kmの直球とスライダー、ツーシーム、スローカーブを巧みに織り交ぜながら、打ち取る本格的な投球スタイルであった。

一回戦は好投手、仲田浩人投手率いる聖光学院(福島)との試合。初回に仲田投手のボークで沖縄尚学が先制すると、そこから東浜投手と仲田投手の白熱した投げ合いとなった。初回の1点を守り抜き、完封勝利をすると、次戦の強豪明徳義塾(高知)との試合でも東浜投手が一人で投げ抜き、見事完投勝利を収める。

そして準々決勝の天理(奈良)戦。東浜投手はこの試合5回から救援としてマウンドに上がるのだが、思わぬアクシデントに襲われる。8回、天理の打者が放ったライナーの打球がマウンドの東浜投手の左ひざに直撃。その場に倒れ込み、ベンチに下がる緊急事態となった。だが、治療を受け、再びマウンドへ戻ってきた東浜投手は後続を打ち取り、チームを勝利に導く。


~エースのプライド~

左ひざの傷が癒えぬまま翌日の準決勝。東洋大姫路(兵庫)戦でもエースとして先発マウンドに立ち、この試合も完投勝利。
そしてむかえた決勝の聖望学園(埼玉)戦。左ひざの負傷、準決勝の完投。満身創痍の身体でありながらも、試合に前に自身初の3連投を監督に直訴した。

疲れを見せることなく初回からアクセル全開に飛ばし、最高の立ち上がりをみせる。その後も東浜投手のピッチングが冴えわたり、9回を無失点に抑え、なんとまたもや完封勝利を挙げるのであった。ちなみに決勝戦の完封勝利は98年の横浜高校・松坂投手以来の快挙である。

終わってみればこの年の選抜はまさに東浜投手の一人舞台であった。全5試合41イニングを投げ4完投2完封、防御率0.66と抜群の安定感を誇り、沖縄尚学を9年ぶり2回目の全国制覇に導いた背番号1。

進学した亜細亜大学でもエースとしてチームを大学日本一へ導き、ドラフトでは3球団から1位指名を受けた。選手層の厚いソフトバンクの中で地位を確立することは簡単ではない。だが、いつの日かエースとして輝ける姿を“あの春”の目撃者でもある筆者は期待したい。


  


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