~指力ってなんだろう?~
「指力」この言葉を聞いたことがある高校球児はどれくらいいるだろうか。指力とは、文字の通り指の力であるが、握る力の握力とは少し違うものを思い浮かべて欲しい。
では、野球においてどの瞬間にこの指力が最大のパフォーマンスを発揮するのだろうか。
それは“リリース時にボールが指から離れる瞬間”である。
野球をプレーしている人間なら誰しも一度は「リリースの瞬間にボールを押し込め」と指導者に言われたことはないであろうか。もしくは「ボールを切れ」や「ボールを弾け」などと。表現の仕方はさまざまだが、この全てに繋がるのが指の力をボールに伝えろということなのだ。
指力がしっかりと伝わったボールは、回転数が増え、球速が上がり、ボールがホップする。また、球速が上がるだけでなく、リリースポイントが安定することにより、抜け球やコントロールの乱れも改善するのである。
Timely!37に掲載される埼玉西武ライオンズ牧田和久投手をインタビューしている際にも指力について話題が広がった。
「指力は投手にとって非常に大切です。どんなに身体が大きくて、160kmの球を投げられそうな凄い筋力があっても、指力がないとスピードが出ないと思います。最後のリリースの瞬間に力が伝わらないとダメなんですよ」と、指力についての重要性を牧田選手は説いてくれた。
けっして球速で勝負するタイプではない牧田投手の言葉だからこそ、説得力を感じる一言だ。
~指力を伝えるコツ~
では、指力をボールに伝えるコツとはなにか。そのヒントは、意外にも「脱力」に隠されている。投球時に唯一力んでもいいのがリリースポイント時の指先である。脱力を意識するのはその前まで。要するに、ボールをリリースするまではできるたけ力を抜き、リリースの瞬間に指先の一点に力を込めるということだ。
最後までボールに触れているのは指先であり、力むべき部分も指先である。もちろん下半身の使い方や体重移動など、他にも投球において大切なことはたくさんある。しかし、この「指力」を意識し鍛えていくことで、また違った景色が見えてくるのではないか。
次回はぜひ参考にしてほしい「指力のトレーニング方法」を紹介する予定である。