強豪校、名門校を率いる監督たちも、かつては手痛い失敗を経験し、後悔したことがありました。その失敗や後悔はその後の指導にどのように生かされたのでしょうか?
今年の3月から、2度の甲子園優勝を誇る小倉全由前監督から監督のバトンを受け取った、日大三高の三木有造監督にお話を聞きました。(聞き手:大利実)
ワンバウンドに対する準備をしていなかった
――過去の「失敗」や「後悔」を経て、それが現在の指導にどう生きているかを語っていただく企画です。三木さんの長い野球人生の中で、真っ先に思い付く、「悔い」はありますか。三木 自分の場合は、高校時代(日大三高)になるんですけど、いいですか?
――もちろんです。
三木 高校2年秋(1991年)、勝てばセンバツがほぼ決まる堀越高校との準決勝、最終回に自分のミスで負けた試合です。今でも忘れることはありません。
当時はキャッチャーで四番。1対1で迎えた9回裏の守備。2アウト三塁の場面で、低めのワンバウンドをミットだけで捕りにいき、後ろに逸らしてサヨナラ負けを喫しました。
カウント1-1からストレートを要求したところ、右打者のアウトコースにショートバウンド。感覚的には捕れると思ったんですけど、ベースの角かどこかに当たって、大きく跳ねました。
――今であれば、体で止めにいくように指導しますか?
三木 サヨナラの場面ですからね。ランナーが三塁にいるのに、ワンバウンドに対する準備をしていませんでした。その頃に戻れるとしたら、体で止めにいくと思います。
試合後はずっと放心状態で、チームメイトからは、「お前のせいじゃない」と言われたんですけど、どう考えても自分のせい。振り返ってみると、ワンバウンドを止める練習をそこまでみっちりやっていなかったんですよね。そこに対する悔いもあります。
本気でやっていたら、体が勝手に反応していたはずです。
――今、日大三高の選手たちに、このときの教訓をどのように伝えていますか。
三木 「1球のミスで、周りを不幸にしてしまうことがある」。特にキャッチャーには、ブロッキングに対して厳しく指導をしています。「ワイルドピッチなんかない。後ろに逸らしたものは、すべてがパスボール。キャッチャーの責任になる。特に低いボールは必ず止めなさい」と、口酸っぱく伝えています。
――低い球であれば、すべて止められると。
三木 はい。現実的に100パーセント止めるのは難しいですけど、それに近いものを求めます。