体力レベルを考慮したオフのトレーニングプログラム
オフシーズンのフィジカルトレーニングは選手の体力レベルと疲労回復とのバランスを取りながら進めていくことが理想的です。ところが選手の体力レベルには個人差があるため、チーム全体で行うトレーニングをどの程度の強度にするかは非常に悩ましい問題と言えます。あまりにも低い強度では体力強化につながらない選手が多くなってしまいますし、逆に高強度の内容になるとついていけない選手が続出するだけではなく、過負荷によるケガのリスクも高くなります。かといって一人ひとりにカスタマイズした練習内容を提案するのは現実的にはかなりハードルの高いものです。一般的に行われているフィジカルトレーニングについて、体力レベルを考慮したものを実践することは可能でしょうか?【自重トレーニング】
自分の体重を使ってさまざまな動作を行い、筋力を中心に筋持久力やバランス能力、敏捷性など幅広い体力要素を鍛えることができます。負荷となるのは自体重なので、個人の体力レベルに準じた運動強度が見込めます。自分の体重をコントロールしながら動作を繰り返すことで、体の巧みさを養うことにもつながります。
運動強度はあまり高くなりませんが、ケガのリスクは比較的低く、トレーニングの導入としても活用できます。
【ウエイトトレーニング】
取り扱うウエイト(重量)は個人の体力レベルにあわせて変える必要があります。全員が同じ重量でトレーニングを行うことはないと思いますが、体重比を用いてそれぞれの目標数値を設定し、実践することが必要です。例えばスクワットであれば体重の1.5倍を目標に設定して、それに向けて少しずつ負荷を上げていくようにするといった具合です。また最大筋力を評価する場合は、ウエイトの重量(絶対値)だけではなく、体重比(体重に対してどのくらい重量が挙げられるか)もあわせて評価するようにしましょう。
体の小さな選手は重量があげられませんが、体重比にすると大きな選手に負けることなく評価することができますし、選手のモチベーションアップにもつながります。
【ランニング】
どうしても本数やタイムなどで区切ってしまいがちなのがランニングです。これも心肺持久力やもともと持つ走力によって運動強度は変化してしまうので、足の速い選手は強度が低く、足の遅い選手は高強度になりがちです。この場合は選手にあわせてタイム設定を行ったり、心拍数が安静時心拍数に比べて80%を超えたらその時点で終了する、休憩をはさむといったことができると、より個人の体力レベルにあったランニングになります。ただしタイムを測定する指導者(選手)が必要になったり、基準となるタイムや安静時心拍数をあらかじめ測定しておいたりする必要があります。フィジカルトレーニングを個々人の体力レベルにあわせることはむずかしいものですが、考え方次第ではより個人にあったプログラムを提案することが可能です。指導現場の参考にしていただければ幸いです。(西村典子)
最大筋力の評価は重量だけでなく体重比も考慮しよう!
著者プロフィール
アスレティックトレーナー/西村典子(にしむらのりこ)
日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS、 NSCA-CPT。東海大学スポーツ教育センター所属。高校、大学など学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。
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