2023年、仙台市五橋にアーバンキャンパスを設立し大学の魅力がますます高まる東北学院大。1958年全日本選手権優勝、準優勝7回の実績を持ち、高校野球を沸かせた東北球児が多く集う。東北No.1の名門に潜入取材した。
華麗なる実績と伝統を誇る、東北準硬式の雄
両翼91m、中堅120mの専用グラウンド(笠神グラウンド)が自慢の東北学院大。週1回の全体練習、他の日も自由に個人練習ができる。学生野球の基本である人間形成、礼儀、挨拶を重んじつつ、「日本一」を目指して野球技術向上に努めている。選手の9割が東北の高校出身だ。柴田、利府、仙台商、山形中央など公立強豪校で揉まれた選手も多い。
創部は1948年。1958年の全日本優勝を筆頭に、準優勝7回、8強以上が18回という実績を持つ。安定した力を残せている要因は、伏見善成監督、荒井晶コーチの自主性を尊重する指導、心技体を鍛える練習にある。準硬一筋、指導歴約25年、元内野手の伏見監督は「仲間と励まし合って鍛え合う部活動は大学生にも必要。準硬式の球は2バウンド目が伸びてくる。硬式とは違った面白さがあります」と準硬の魅力を説明した。
個人練習の自由度がある分、身だしなみやアルバイトなどに対して30以上の細かい規則がある。品格は大切に。「高校生の見本となる選手になろう」。時代が変わっても、伝統校の規律は受け継がれている。

6月20日、全日本選手権の出場が決まった。東北出身の選手にとって、東日本大震災から10年目の今年は特別な思いがある。多賀城市にあるグランドにも高さ1.5mほどの濁流が押し寄せた。打撃ケージは流され、綺麗だった黒土はガレキや魚などの死骸が混ざったヘドロに代わってしまった。7月まで清掃に追われ、野球どころではない生活。「準硬のボールだけは残っていたので、洗って使うことができました」と伏見監督は振り返る。10年でグラウンドは元通りになったが、錆のあとを見ると震災の記憶が蘇る。応援してくれた人たちへの感謝を忘れてはいけない——。準硬式という選択に誇りを持つ学院の選手たちが、63年ぶりの日本一をつかみ取る。

練習Watching!

平日の全体練習は木曜日13時から3時間ほど。ウォーミングアップでは声をしっかり出して、基本のキャッチボールも1球1球集中して行う。

硬式野球部からもらった硬式球を半分混ぜた打撃練習で対応力を養う。

今春購入の折り畳み式の打撃ケージ! 練習にもいっそう気合が。
東北隋一のグラウンド

学業成績とセレクションを突破してきた選手がそろう。チーム内のライバル争いも激しい。
主将インタビュー

小林将希(4年・外野手・柴田)
8戦全勝で王座決定戦優勝を果たしました。今年のチームは守備からリズムを作るチームです。打撃面は嶋田友(2年・浦和学院)、後藤雅輝(4年・山形中央)のクリーンナップを軸に首位打者を取った加藤和(4年・東北)も安定しています。
学院大準硬式野球部は、楽しみつつも真剣。メリハリを大事にして練習しています。有観客になったら宮城の高校野球ファンにも試合を観に来て欲しいと思いますね! 全日本大会に向けてもう一度意識を統一します。全国での目標は最低でもベスト8! 全国には強い相手がいると思いますが、勝って伏見監督に勝利をプレゼントしたいですね!
学院のジュンコーが熱い!

鈴木隼人(4年・内野手兼学生委員長・仙台商)
鈴木隼人さん(4年・仙台商)は学生委員長・選手(打率4割!)を兼任するマルチプレーヤーだ。ツイッター、インスタグラム、ブログで積極的に発信。東北王座決定戦のポスターは3つのアプリで自らデザイン。「拝啓、高校時代の自分へ。求めているものは、準硬式にある」というキャッチコピーが胸を打つ。
「仲間のミスに本気で怒ることもあるし、野球の話ばかりしています。準硬にはいろんな魅力を持った選手がいて、ボールひとつで心がひとつになれる。高校時代の自分に『選択は間違ってなかった』と胸を張って言えますね」と話した。


