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【柴田】足と守備で私学打破。決勝敗戦も
「お前たちすごいぞ。俺は誇りに思うぞ」

2021.1.25

昨秋、創部初の東北大会準優勝を果たした柴田は、2002、2013年には夏の宮城大会で準優勝の実績を持ち、ロッテなどで活躍した守備の名手・小坂誠選手や、元楽天・熊原健人投手らを輩出した体育科のある公立校だ。今春のセンバツ大会に選考されれば初の甲子園出場となる同校の打倒私学を目指す思考、走塁を軸とした戦術、質と量にこだわった練習には、全国の公立高校が真似できる要素が多くちりばめられていた。全3回にわたってレポートする。


「野球特待なし、室内練習場もなし。その環境で強豪と言われる私学を倒すことがどれだけ大変なことか。柴田が見せた快進撃は、多くの公立高校の希望になりましたよね」

昨秋の東北大会。県3位の小山(こやま)から、学法石川(福島3位)、八戸学院光星(青森1位)、東日大昌平(福島1位)、日大山形(山形1位)に4連勝。決勝で仙台育英(宮城1位)に敗れはしたが、柴田の戦いを見たある宮城公立校の野球部監督が興奮して話していた。決勝進出したことにより、センバツの推薦条件は満たしている。東北出場枠は「2」。選ばれれば、創部35年で悲願の甲子園出場だ。平塚誠監督(48)は就任11年目。夢が実現するか。いま、多くの指導者が柴田に注目している。


宮城3位で出場した東北大会では5試合を戦い準優勝。3試合で初回に先制点を奪った。

あと一歩で負け続けた11年。
「宮城の悲願校」と呼ばれて

宮城県の南部。仙南圏と呼ばれる柴田町に学校はある。町民約3万8千人。「日本さくら名所100選」に選ばれる桜が有名な小さな町だ。県で2校しかない体育科を持つ柴田は、2002、2013年夏の宮城大会で準優勝。東北大会は2013年秋、2015年春に出場している。OBにはロッテや巨人、楽天でプレーし、パ・リーグ新人王、盗塁王2回、ゴールデングラブ賞4回を受賞した小坂誠や、2015年のドラフトでDeNAから2巡目指名され、楽天でもプレーした熊原健人投手らがいる。県内では公立の実力校として知られるが、全国的にはまだ無名の学校だろう。

ファンの間で話題になるのは2012年に一新したユニホームだ。タテジマに赤いロゴ。「はい、似てるってよく言われます」と平塚監督も認めるデザイン。浦和学院とそっくりなのだ。だが、ユニフォームを変えても甲子園に手は届かなかった。書籍『あと1歩!逃し続けた甲子園』(田澤健一郎著・KADOKAWA刊)では「宮城の悲願校」の代表校に挙がっている。そのことにも触れると「アハハ」と笑いながら、平塚監督は自虐気味に話した。

「(佐々木)順一朗先生には確か11連敗。負け続けました…。僕らが勝ち上がっていくと、いつも目の前には仙台育英がいた。2013年夏は決勝で9回サヨナラ負け。ホント、大きな壁でしたよね」

しかしこの秋、その佐々木監督が2018年秋から指導する学法石川に東北大会初戦で逆転勝ちしてから、柴田は憑き物が落ちたように勝ち上がった。試合後、佐々木監督のもとに行き深々とあいさつする姿は平塚監督の人柄が現れていた。就任11年、初めて憧れの名将に勝つことができたのだ。


定時制や、部員不足に悩む野球部を指導してきた平塚監督は、勝利を目指しつつ選手の成長度に価値を置く。


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