学校・チーム

【慶應義塾】森林監督に聞く、「高校野球の3つの価値」

2020.12.17

(3)スポーツマンシップを身につける価値

写真提供:東洋館出版社

――3つ目が「スポーツマンシップを身につける価値」ということですが、森林監督の考えるスポーツマンシップとはどういうものになりますか?
すごくざっくりした言い方ですが、「よい人間になる」ということだと思っています。スポーツを通じてどのように人間性を高めていくかということだと思いますし、スポーツをやっている時にだけ役に立つとか、そういうことではなくて、高校野球を終えてその後70年の人生があるとして、先ほどの「考える力」と一緒でスポーツマンシップを身につけていて損することなんて絶対にないんです。
野球であれば相手を尊重する、ルールを尊重する、審判を尊重する。それが社会に出れば仕事のパートナーを尊重するとか、ライバル企業でさえ尊重するとか、顧客を尊重するとか、そういうことにつながると思います。スポーツマンシップが身についているということは、その人の人生において必ず武器になると思います。
 
――高校野球では昨年の選抜大会で「サイン盗み」が問題になりました。現状の高校野球は他のスポーツに比べてスポーツマンシップの浸透度は高いと思いますか、低いと思いますか?
どう考えても高校野球はスポーツマンシップの精神が足りていないと思います。その弊害が勝利至上主義だと思います。勝てばいい、勝ちさえすれば手段は選ばない。バレなきゃいい、見つからなきゃいい。サイン盗みは学校の先生が生徒にカンニングを勧めているのと同じですよね。「バレないようにカンニングしろよ」「俺は知らないことになってるから上手くやれよ」と言っているのと同じです。
サインを盗んで打てるようになっても、そんな力で大学やプロ野球では通用しないですよね。高校時代だけ通用すること、今だけ勝てるようにするためにそういうことをする。それはその子の人生で活きないですしマイナスにしかならないですよね。指導者がその子の「今」を食い物にして「将来」を奪っている、とさえ言えると思います。(取材・写真/永松欣也)



森林貴彦
慶應義塾高校野球部監督。慶應義塾幼稚舎教諭。
1973年生まれ。慶應義塾大学卒。大学では慶應義塾高校の大学生コーチを務める。卒業後、NTT勤務を経て、指導者を志し筑波大学大学院にてコーチングを学ぶ。慶應義塾幼稚舎教員をしながら、慶應義塾高校コーチ、助監督を経て、2015年8月から同校監督に就任。2018年春、9年ぶりにセンバツ出場、同年夏10年ぶりに甲子園(夏)出場を果たす。


PICK UP!

新着情報