学校・チーム

【慶應義塾】森林監督「高校野球は変わらないといけない! 」

2020.12.17

昼は慶應義塾幼稚舎の教員をしながら夕方からは慶應義塾高校野球部を率いている森林貴彦監督。2018年には文武両道を掲げたチームを春夏甲子園出場に導き、現在も「選手個々の将来を見据えた指導」と「目の前の試合に勝つこと」のいずれも実現させるという困難なミッションに挑み続けている。そんな森林監督が出された著書『Thinking Baseball――慶應義塾高校が目指す"野球を通じて引き出す価値"』についてお話を聞きました。


既存の高校野球とは違うスタイルで勝つ

――本書の中ではコーチングについても述べられています。筑波大学でもコーチングを学ばれたそうですが、コーチングで一番大事なことは何でしょうか?
よくティーチングと一緒に語られることがあると思いますが、ティーチングとの対比でいうと「できるだけ教えない」ということですね。簡単に教えない、自分で掴ませる、自分で答えを見つけさせる。もちろん、そのための環境作りや手伝い、サポートは行いますけども。

――「できるだけ教えない」ことが、前回お話を伺った「自分自身で考えることの楽しさを知る価値」にも繋がるわけですね。
そうですね。例えば今のチームの課題はバントが上手く決まらないことなのですが、「どういうバント練習をしたらいいのかをこの冬に自分たちで練習方法を編み出して」と言っています。私の方から経験に基づいて「バントはこうやれ」「こんな練習をしろ」というのは簡単なんです。でも与えられた物ってたいして身につかないと思うんです。自分で考えたり、勉強したり、研究したり、自分で足を運んだりというものが、その人の力になると私は思っています。

――高校野球では実質2年半しかないということも関係していると思いますが、ティーチングの方が多い印象がありますね。
甲子園という存在の大きさ、大きすぎるところがそうさせているのだと思います。素晴らしい舞台ですし、私もまたあそこに行って選手たちと一緒に野球をやりたいともちろん思っています。でも、甲子園に行きさえすればいい、そこにいくためには手段を選ばない。野球以外のことを考える暇を与えないほど練習をさせて子どもたちを管理する。そうやった方が限られた時間の中で甲子園を目指すには結果を出しやすい。そのような高校野球の構図が指導者をコーチングよりもティーチングに走らせる理由だと思います。

――2年半という期間で甲子園を目指すということを考えると、コーチングはティーチングよりも時間がかかり、遠回りになりませんか?
例えば甲子園という「山」があってその頂点を目指すとします。多くの人は真っ直ぐ直線で登ろうとすると思いますが、慶應がやろうとしていることは「こういうやり方でも甲子園に行けますよ」「こういうやり方でも全国優勝できますよ」ということなんです。一見すると遠回りをしているように見えるかもしれません。でもその道もまた頂上には繋がっているわけですから、目指す場所は同じなんです。

――遠回りというよりも、既存の高校野球とは違うスタイルで勝ちたいということでしょうか?
そうですね。高校野球ってやっぱり皆さんが狭い「幅」で見ていると思うんです。高校野球=坊主頭、全力疾走、監督の言うことは絶対、厳しい上下関係のような。そういうチームもあって良いと思いますが、これからはもう少し広い幅で高校野球を見ないと、(このままだと)絶対に人気も下がると思います。テレビをつけても野球を放送していない時代で、野球を選ばない子どもも、子どもに野球をさせたくない親も現実増えていますから。
こういうスタイルでも強くなれる、こういうスタイルでも甲子園に出れる、こういうスタイルでも甲子園で優勝できる。そうやって高校野球の幅を広げる。それを慶應が示したいと思っています。


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