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【監督から3年生へ贈るメッセージ】市ケ尾高校監督 菅澤悠

2020.8.20

小さい頃から憧れた甲子園という舞台を奪われた今年。それでも最後まで高校野球をやりきった3年生たち。そんな3年生たちに向けて、監督にメッセージをお願いしました。今回は神奈川県立市ケ尾高校の菅澤悠監督からのメッセージを紹介します。


神奈川独自大会敗退の5日後、大会を観戦することができなかった保護者、吹奏楽部、バトン部、その他一般生徒の前で行った引退試合。
この2年半の成長を感じつつ、時折見せる珍プレーと笑顔に心が穏やかになりました。

2018年4月に入部してきた選手12人、マネージャー2人。

・例年より若干人数が少ない
・とても身体が小さい
・お世辞にも野球が上手いとは言えない

そんな印象の君たちからは、多くのモノを私に与え、考えさせてくれた。
君たちからの1番の学びは、「信頼と相互理解は技術を上回る」ということ。

19年秋、夏のレギュラーは1人だったチームがチーム打率4割を超えて県の32まで勝ち上がった。あとアウト3つで16強のところまで戦うことができた。
相変わらず野球は上手くないチームだったけど、自分にできることを明確にし、周りもそれを理解し、信頼し、そしてチーム全体が1つになっていく感覚があった。
こんなチームをまた作りたい、そう思わせてくれた。

ひと冬を超えて、ようやく野球も上手くなった手応えがあったときに新型コロナの影響で休校、野球部も活動停止を余儀なくされてしまった。

先の見えない不安。
「なぜ自分たちのときに…」というぶつける場のない感情。
心の折れそうな君たちを時に励まし、時に叱責してきたが、誰も経験したことのない日々を過ごす君たちに何を言ってあげたら良いのか日々悩んでいた。

そんなとき君たちに送った単語が「GRIT」だった。どんな状況になっても自分が決めたことを日々「やり抜く」。そうやって強くなっていこうと。
簡単なことではなかったし、何度も注意されながらだったけど、みんなが成長し、6月下旬にグランドに帰ってきてくれた。
最後は満足できる結果ではなかったけど、全員で精一杯戦うこともできた。

そして多くの人々が見守る中、慣れ親しんだグランドで笑顔でプレーして引退することができた。
普通じゃない状況の中、普通なら得られないモノも沢山得ることができた半年だったと思う。

コロナに関しては、この経験をプラスに…という言葉はこれまで1度も言っていないし、これから先も言うつもりはない。
この経験をした高校球児は君たちの世代しかいない。既に高校野球を終え、指導者になっている人間には、気持ちに寄り添うことはできても、本当の意味で気持ちを共有することはできない。

それでもなお、言葉をかけさせてもらうなら、「これが不幸だったかどうかはその人次第」。
失った物があるのは事実。だがそれを上回る程の「得る物」があればコロナに負けたことにはならない。数年後、数十年後「コロナがあったから〜」と思い出話になる程の成長を期待したい。

これは君たちだけでなく、全国の学生への願いでもある。

すべての人々が日々の生活を笑顔で過ごし、前向きな気持ちで次のステージへ進む日が来ることを心より願っています。
神奈川県立市ケ尾高等学校
野球部監督  菅澤悠

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