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【監督から3年生へ贈るメッセージ】岡山県共生高校監督 森下雄一

2020.8.18

小さい頃から憧れた甲子園という舞台を奪われた今年。それでも最後まで高校野球をやりきった3年生たち。そんな3年生たちに向けて、監督にメッセージをお願いしました。今回は岡山県共生高校の森下雄一監督からのメッセージを紹介します。


2018年春、彼らが夢と希望を抱き共生高校野球部に入部してきた。同年の7月7日、西日本豪雨災害が岡山を襲い、倉敷市真備地区をはじめ、県内の多くの地域に深い爪痕を残した。その秋に本校野球部は、2020年の夏の大会後、休部することが決まった。この時点で翌年の一年生の野球部員の募集停止は決まっていたため、2019年夏の大会は2・3年生部員30名で戦った。

2019年秋の新チームからは、16名の一学年で準備・実行・後始末を行なった。これは彼らにとっては、とてもイレギュラーなことだ。本来はしなくてもいい苦労だけに、とても申し訳ない思いだった。それでもそれぞれが協力しあい、野球場のグラウンド整備、トイレ清掃、草取りなど、選手はグラウンドに育ててもらっているので、当たり前といえば当たり前だが、少ない人数でとても良い状態を維持し続けてくれた。

物事は続けて行くことがとても難しい。何かを始めるには勢いがあれば始められる。一方で終わらせるのはとても簡単。ただ続けて行くことだけが本当に難しい。積み上げることの大切さ、継続することの大切さ、勝つことの難しさなどを、野球の練習や試合、日常生活の中からたくさんのことを学んだと思う。純粋に野球に取り組み、懸命に努力すれば、大切な物が見えて、自然と備わってくる。生活習慣や、物の考え方の普遍的なことを当たり前にやり、人としての心の強さを鍛えてきたことは間違いない事実だ。しかし人生とはすべてがうまくいくものではない。努力や工夫が報われないことも多い。

この夏、岡山県の独自大会では、2回戦敗退という自分たちの思い描いていた結果とは程遠かった。しかし、さわやかに、ひたすらさわやかに戦うというチームの大きな目標は最後までやりきれた。ゲームセットの瞬間まで、全員で戦う高校野球本来の姿勢が見てとれたことは立派だった。もちろん足りないところもたくさんあるが、未完成な高校生なのだから仕方ない。

これから野球を続ける者は、諦めなければ可能性は続く。諦めたら可能性はゼロになる。納得のいくまでやってみれば良い。野球を離れる者は、また別の可能性を探す旅に出る訳だが、いずれにしても一年生からの始まり。まずは可愛がられる人になること。その後は信頼される人になることを望む。尊敬される人にまではならなくて良い。

高校野球を通して集団の中での役割とか、人の痛みとか、喜びが分かるような活動をしてきたことが、今後の君達の人生で何らかのヒントになってくれると幸いです。成功してもおごらず、失敗してもくよくよしない。ミスをすることを怖がらないで、あくまでも“さわやかに、ひたすらさわやかに”次のステージのスタートをきってもらいたいと思う。

最後に、全国の高校3年生の球児たちへ。
 
本当にイレギュラーな半年間でした。不運にもコロナ世代になってしまいました。長い歴史の中でも君たちにしか経験したことのない出来事なので、心情を察することはできても、共有することはできません。

今後、多方面で活動して行くことになるわけですが、他者との戦いよりも自分との戦い、他者との共存が求められる時代だと思います。

高校野球で積み上げてきた2年半と、コロナで苦しんだ半年間が、今後の活動で生かされることを切に願います。

岡山県共生高校 硬式野球部 監督 森下雄一

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