企画

【脱・流れ論】野球の「流れ」を再考する(1)

2020.2.27

「メンタル上の流れ」と「結果上の流れ」

「流れ」の定義の中に、「メンタル」と「結果」という言葉が入っていますが、ここで1つ、重要な提案があります。それは、この2つの言葉を使って、「流れ」を「メンタル上の流れ」と「結果上の流れ」に分けるということです。どういうことかと言いますと、たとえばファインプレーがあったとき、多くの場合、味方選手の士気は高まり、「次の攻撃につながる!」というチームの良い雰囲気が生まれます。まさに「メンタル上の流れ」の存在を感じるわけです。一方で、実際にその後の攻撃で得点が入ったのか、また勝敗に何か影響を与えたのか、という点は、「メンタル上の流れ」とは別の話になります。これが「結果上の流れ」です。図で表すと以下のような関係になります。



メンタルと結果の2つに「流れ」を分けるのは、非常に重要だと思います。そもそも「メンタル上の流れ」は、間違いなく存在すると言えるでしょう。誰だってファインプレーがあれば喜びますし、エラーやバント失敗があれば落ち込みます。ピンチを三者三振で切り抜ければ、当然チームの雰囲気は良くなり、次の攻撃で点が取れそうな気もしてきます。一方で、こうした「メンタル上の流れ」が、実際にその後のプレーや結果に何か影響を与えるのか、つまり「結果上の流れ」が存在するのかについては、実際のデータを見てみないとわかりません。

この2つの違いを意識しておかないと、ときに議論がかみ合わないことがあります。ちょうど先日、「送りバントの効果」に関する記事が話題になりました。送りバントは得点の確率や期待値を下げるため、基本的にはあまり効果的な作戦ではない、という趣旨の内容です。この記事にはさまざまなコメントが寄せられていたのですが、その中には「流れ」に関するものも多くありました。たとえば「たしかに得点の確率や期待値を下げるかもしれないけど、流れの存在を踏まえると必ずしも効果がないとは言えない」といったものです。バントを決めるとチームの雰囲気が良くなる、ダブルプレーを回避することで相手に流れを渡さずに済む、ということなのでしょう。

ここで、メンタルと結果、2つの「流れ」を分けておかないと、バントの効果をめぐる議論がうまくいかなくなります。「結果上の流れ」を考えている人にとっては、「バントでチームの雰囲気が良くなろうと、ダブルプレーを回避できようと、得点の確率と期待値を下げているのであれば、バントは効果的な作戦とはいえないし、流れについて考えるのは無駄である」となるでしょう。しかし、「メンタル上の流れ」を考えている人にとっては、「たとえ得点の確率と期待値を下げるとしても、チームに流れをもたらし、相手に流れを渡さないのだから、効果がないとは言えない」となります。両者の主張は割れていますが、これはメンタルと結果、どちらの「流れ」を考えているかの違いによるものです。2つの「流れ」が混同したままでは、バントの効果について実りある議論はできないでしょう。こうした事態を避けるためにも、メンタルと結果、2つの「流れ」を区別しておく必要があるわけです。


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