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【八王子学園八王子】強敵に立ち向かうために「徹底力」を鍛える「ありんこ軍団」(後編)

2019.5.21

取材をしたのは4月中旬の平日練習であったため、選手全員がグラウンドに集まったのは16時半過ぎ。選手たちは統率の取れた動きでグラウンドを走り回り、目的意識を高く持って練習を行っていた。3学年合わせて80人を超える八王子ナインの練習・取り組みを紹介する。


選択は個人に任せるバッティング練習

シーズン中は土日に練習試合が行われ、週の始めはノックを中心にした守備や走塁練習、週の後半はバッティング中心のメニューになるという。取材日はバッティング練習に多くの時間が割かれていた。アップを終えると鳥カゴが設置され、マシンや打撃投手の球をレギュラーメンバーが順番に打っていく。ボックス内で「ランナー1塁! エンドラン!」「ランナー二塁! セーフティー!」といったように選手自身で状況を設定するのが特徴だ。

「土日の試合を経て、選手個人に足りない技術や、チームで今後強化する部分はミーティングで共有しています。だから、バッティング練習ではこちらが指示をするのではなく、自分で考えて足りない部分を鍛えるのがうちのやり方です。ずっとバントをしてもいいですし、ひたすらエンドランをしてもいい。『自分が試合でこういう場面になったらどんなサインがでるか考えながら打ちなさい』と言っていますから」。



「ランナー1、2塁! バント!」と宣言したにも関わらず、ピッチャー前に転がしてしまったら、後ろで待つ選手が「3塁側にしっかりやろうぜ!」と声を出す。待つ選手もただボーと見ているのではなく、同じようにバントの構えをし、イメージトレーニングしているからそういった声が自然に出るのかもしれない。良いバッティングをした選手には「ナイスバッティング!」とチームメイトを鼓舞することも欠かさない。他にも待つ間、自主的にハンマーを使いタイヤを叩いたり、腕立て伏せをしたりと自分に足りない箇所を鍛えていた。



さらに、打撃投手を通常のマウンドより近づいて投げさせることで、速い球にも振り遅れない力も身につける。

「春に負けた東海大菅生の中村晃太朗くんや、日大三の井上広輝くんや廣澤優くん、早稲田実業の伊藤大征くんなど、今年の西東京には球に力のある好投手が沢山います。彼らを打たなければ甲子園はないので、速いボールへの対応力は重点的に鍛えていますね」。

投手完全別メニューという新たな試み

 

グラウンドからさらに坂を登るとそこには平らな広いスペースがある。下から金属音が聴こえる中で投手陣は一球一球フォームを確かめるように黙々と30メートル間のキャッチボールを行っていた。自分の順番が来ると4人が同時に投げられるブルペンへと走っていく。ある投手に「この後のメニューは何ですか?」と聞くと「自分たちはブルペンですが……すいません。野手のことはわかりません」という答えが返ってきた。

「実は今春から新たな試みとして、打者を兼ねている投手を除いてグラウンドに着いた瞬間から投手陣は完全別メニューにしたんです」と安藤監督が教えてくれた。これは八王子の長い歴史でも初の試みだという。武内寛斗、北澤壮汰といった実績豊富な3年生に加え、春には2年生左腕の溝口雄大が台頭したが、西東京はそう甘くないということだろう。

「夏までにもうワンランク上の投手にならなければ勝てないと思い、甲子園常連の指導者や、有名なトレーナーのアドバイスを受けて始めました。昔は何でも自分で指導がしたくて、他の先生が自分の生徒に指導すると『自分の言うことを聞かなくなってしまう』という恐さが正直ありました。でも、今は情報が沢山溢れている時代ですし、専門的に勉強している人には勝てません。それに、色んな人の意見を聞いた方が子どもたちも幸せだと思うようになりました。大学の練習に参加させることもありますし、上手い選手と接することや結果を残す選手の意見を聞いて成長に繋げて欲しいです」。


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